静岡の高速バス倉庫 アーカイブ

過去記事のアーカイブになっています。

受注競争とか。

 以前のエントリを見直していたんですが、ドリーム静岡・浜松号の運転開始の時、地元の旅行会社が「ツアーバス」を走らせたものの、結局の所は運行休止になったって言う記事があったって思うんです。まぁ、静岡らしいって言うか何というか・・・って言う感じで思っていたんですが。
 ここ最近になって、色々とバス関係の運行管理って言うか乗務員管理の関係で色々な問題が出てきているのは報道でもご承知の事かとは思います。言い方としては悪いですが「死人が出ないと何も変わらない」って言う状況に近いものがあるのが実際の所。旅行会社自身の収益を維持するため、バスを安く買い叩くのか、って言う構図がそこにあるワケで。実際、自分が現役で旅行会社に勤めていた頃、徐々にそれらの「格安バス会社」が静岡県内にも登場し始め、既存バス会社が持っていたお客さんを「安い値段で」かっさらって行ったと言う状況を見てきていますし、それこそバスを持っている旅行会社であっても、自社のバスを使うと「値段が高くなるから」と言う理由で、格安バス会社に依頼をすると言うケースも実際にありました。そんな事をやっていたのがかれこれ6年前くらいの話ですので、今はそれがさらにエスカレートし、結局死人を出すと言う状況にまで陥っているって言う状況で。
 実際、バス会社には「基本運賃表」と言うのが貸切バスにも存在していました。例えば、静岡市内から東京都内まで日帰り往復だと200,000円とか(もう少し安かったかな?)ありましたし、学生さんの市内送迎は幾ら、と言う事も決まっていました。確かに時期によっては上限・下限も設定されており、その枠の中で仕事を受注するために値段を下げてみたり、場合によっては利益を確保するために「下駄を履く」と言うような事もやっておりました。
 正直、今のバス会社の実情は分かりませんが、少なくとも発注側の優位って言うのはどこの業界でも一緒のような気がします。「高かったらいいよ、別の会社でやるだけの話だから」って言う事を親会社が言うのは日常茶飯事ですし、そんな中で「そんな安い値段じゃもう仕事を受けられない」と言う事で会社をたたんでしまう所もあれば、その畳んだ会社の仕事を苦しい状況にありながらも受注をしなければならない、そう言う会社も製造業にはあったりします。確かに「競争力」がある会社が生き延びるって言うのは在る面では当たり前の話になってくるワケなんですが、果たして、そんな状況が本当に正しいのか?って言われれば正直な話「どうなのかなぁ」と思う所もあったり。
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 「設備貸与制度」って言う制度があります。
 これは、各都道府県の貸与機関が設備を購入し、その購入した設備を中小企業の方に割賦で販売したりとかリースをしたりとか、って言う制度なんですが、基本的には民間のリース会社とかでもやっている事だったりします。正直、果たして公的機関がやっていていいのか?って言う議論があるワケなんですが、基本的にこの制度を使用する会社って言うのは「資金調達が困難な会社」になるんですよね。考えられるパターンとしては家族経営の工場とかで、受注を維持するためには、精度の出る設備を入れなくてはならない。だけど、設備投資に回すだけの資金的な余裕が無い、こう言った場合に使われる会社が結構多くあります。実際、この制度を使って大きく経営が改善した会社さんもあるワケなんですが、その反面で思ったような受注を得る事ができずに倒産に至るって言う会社さんもあったりします。その倒産の要因を色々見ていくと、正直言って暗澹たる気分になる事が結構多いです。
 技術があって、設備を入れても、結局は他の会社の当て馬にしか使われなくなってしまい、投資した設備が無駄になってしまって結局倒産とか。まぁ、親会社の行動基準は「自らの利潤極大を目指す」って言うのがその根本にありますのでどんなに言っても仕方ない部分はありますし、その行動をを否定するワケには行きません。ならば、新分野への進出すればいいじゃん、って言う事になりますが、果たして「どんなものを作ればいいのか」とか「製品を作ったのはいいものの、じゃぁ、その販路開拓はどうすればいいのか?」って言う部分でも行き詰まる所も出てくるんですよね。
 正直、「新分野」とか色々と言ってますが・・・本当にその可能性ってどうなの?って思います。「創業を促進する」って言うのは確かに必要だとは思うのですが、意地の悪い見方をすれば「そんなの雇用調整の役目として」だけじゃないの?なんて事を思わず考えてしまいそうになる自分が居たりするのですが。
 恐らく、バス業界にとっての「新分野」って言うのが、いわゆる「ツアーバス」であるのかもしれません。確かにツアーバスが色々出てくる事によって、既存事業者も様々なサービス向上が図られ、乗る人間・眺める人間にとって「楽しい」時代になった事は間違いがありません。ですが、そこで「ただの価格競争」になってしまっている事こそが最大の問題になるのではないでしょうか。製造業だけの問題でなく、バス業界に関しても。
 明確な解は正直すぐに出るものではないと思いますし、やはりユーザーサイドとしては「安い方がいい」ワケですから「脱法ツアーバス」と言われながらも、その形態は無くなる事はないと思います。むしろ、現状の中で「安い」と言う以外の方法を既存事業者・新規事業者とも見つけ出さなくてはならないと思いますし、まずはそこで働く人が「安全に」運行できるような体制作りをするって言うのが最大の問題になるのではないでしょうか。