静岡の高速バス倉庫 アーカイブ

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最近、静岡の高速バスが盛り上がってね?(`・ω・´)

 電話番さんの所の昨日のエントリ「最近、静岡の高速バスが盛り上がってね?(`・ω・´)」の件に関するリプライというか何というか。
 まぁ、地元の人間としては「東京に気楽に行けるようになった」って言うのが一番大きな所であるのは確かな部分かとは思います。実際、おいらなんかの場合は今月に関しては毎週週末は東京へ出かけていますからね(苦笑)。まぁ、オケの練習2回、純然たる私用1回、マニア行為1回なんですが。おいらの場合はかなり「特殊なケース」として自己認識しているので、決して一般的なケースではないと思うのですが、それでも、ここまで高速バス路線が出来てなかったら毎週は行けないだろうな、って思う所はあったりもします。大体、普通の人であれば月1回東京に行けばかなり多い方なんじゃね?って思ったりもするんですが。


そういう高速バスには不利な土壌にあって、夜行路線を皮切りに次々と路線展開することの意味は、単に規制緩和で参入しやくすくなった事やバスを認知してもらうといった直接的なものばかりではなく、福岡や広島のように一つの「お出かけ文化」を創り上げるつもりではないかと思われます。
最近、静岡の高速バスが盛り上がってね?(`・ω・´)-電話番日報 6/22より
 規制緩和って言う事情もあるかとは思いますが、幾つかの複合的な要因が絡まって最近の開業ブームになっているんじゃね?って推測している所はあります。
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1 バス会社の経営思考の変化
 まずはこれを挙げたいと思います。今までしずてつジャストラインは一切高速路線に手を出して来ていませんでしたが、それこそ中部国際空港線の開業をきっかけにして、しみずライナーへの運行協力〜運行参加、そして駿府ライナーの運行開始。これは、全国的に見られている「バス会社の経営基盤確保」って言う所が正直大きいと思います。不採算路線の廃止とかをやる一方で、その代わりの収益源を探さないとならないって言う部分があるのは確実な話でしょう。少なくとも静岡側から見れば、輸送需要がある程度存在している対東京の輸送シェアの一部でも新幹線から取ることが出来れば、って言う部分があります。
 その一方で、東京側事業者が既存ドル箱路線の大幅縮小を余儀なくされてしまった中で、こちらの方も生き残りを賭けて新規の収益源を探さないとならない。その両者の目論見一致が「しみずライナー」であり「駿府ライナー」になるんじゃないのかなって思っています、と言うか確実な話でしょう。バス会社自体も変わらざるを得なかった、って言う部分からの当然の帰結とも言うべき部分でしょうか。

2 価値創造力の違い
 静岡から東京までは新幹線で約1時間(ひかり号使用)。ですが、その「1時間」と言うものが大きな壁を築いているのは間違いない部分であると思います。例えば専門書籍。静岡の書店では売ってないようなものであっても東京の書店に行けば確実に手に入ったりします。洋服とかだってその他諸々の部分でもそのような傾向は有るのではないかと思います。
 その一極集中の高度化を進めているのが情報通信技術の発達ではないかと思うのです。自宅の部屋に居ながらにして様々な新しい情報を得る事が出来る訳で。ですが、それらの情報はあくまで「情報」としてしか存在していません。情報の本質を考えると、情報そのものに意味がある訳ではなく、情報を生み出すモノに価値があるのではないでしょうか。では、その「価値」がどこで生産されているのかって言う事を考えると・・・やっぱり東京なんですよね。
 最近静岡で話題になっているパルコもそうですし、109Dreamsもそうですし、新静岡センターの改築後に入ると言われている東急ハンズもそうなんですが、やっぱりそこにある「価値」と言うものは東京から輸入されているものであり、決して静岡と言う地域が価値創造したものではないんですよね、残念ながら。
 情報に触れればやはりその「情報の源泉である価値」に触れたくなるのは当然の帰結になるわけで。これは逆の事からも言えるのでは無いかと思います。例えば、もし自分が東京に住んでいるとした場合に、静岡にしょっちゅう行くことがあるのか?って言う事なんです。まぁ、何らかの価値観が自分にとって重要であると考えた場合には行くのかもしれませんが、結局それは余程のレアケースなんですよね。そう言う部分からも「東京への流れ」と言うものが存在しているのではないかと思いますし、逆に名古屋行の系統が殆ど出てないと言う証明になるのではないでしょうか。

3 中途半端に近い距離
 静岡の地理的条件を考えた場合東京に行くのも名古屋に行くのもほぼ同じ距離であり、かつ、同じ所要時間なんですよね。これが静岡地域の「文化」ってもんを希薄にしているような気がしないでも無いんです。そう簡単に行く事が出来ない距離であれば「諦め」に似た何かがあるとは思いますが、バスで3時間、新幹線で1時間と言うのは「案外どうにかなってしまう」訳で。自動車で日帰りもやって出来ない距離じゃないってのもあるでしょう。

4 顧客層
 で、このような条件の中から見ると「東京への輸送需要」って言うのは非常に多くある訳で。親和性も非常に高い地域ですし、やはり「価値」が多く集まっていると。まぁ、ある程度のお金を持っている人であれば片道約6,000円の新幹線も苦では無い訳です。それこそ会社の用事で東京出張と言うのであれば私自身も新幹線を使うのは厭わないですからね。
 ある目的を達成する事には幾つかの費用がかかりますが、この費用を細かく見ていくと性格的に2つのモノに別れるって思うんです。P/Lで言う所の「製造原価」的なものと「販管費」的なものとなんです。製造原価は当然ある程度のコストダウンを図る必要があるとはいえ、生産量が増えた場合にはある一定の伸びを示す訳で。ですが、販管費はそれらの生産量の増加とは基本的に連動していません。そうなって来た場合、ある程度の収益を確保するためには「販管費」を下げる方向で考えなくてはならない訳ですよね。
 これと全く同じ事が言えるって思うんですよ。買い物に東京まで行くとき、やはり「欲しいモノを買うお金」はある程度確保していきたいけど、そこまでの足代は可能な限り抑えたい、って言うのが普通だと思うんです。可処分所得がある程度ある人であれば問題は無いでしょうが、学生さんとかのような可処分所得が少ない人もやっぱり「行きたい」と思うわけで。
 それと、後考えなくてはならないファクターとしては交通バリアの問題もあるかと。新幹線で行けば確かに早いかもしれないですが、乗換とか言うバリアの事を考えるとやはり少ない方がいい訳で。そう言う面では「乗換」と言うバリアが少ない交通機関を希求する人も存在します。そのような人も顧客層には居るのではないかと。
 そして、コストパフォーマンスとの関係だと思います。新幹線使って約2時間、片道約7,000円。高速バスでは約3時間、片道3,000円もしない・・・と言う事を比べた際、自分の所要にその分だけの金銭的価値があるのかどうか、って言う事を考えてしまう部分は存在するのではないでしょうか。

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 色々と屁理屈を書いてみましたw。
 確かに「新幹線」と言うメガキャリアがあるだけに手を出すにも出せなかったって言うのが今までの実際の所かもしれませんし、それは故に「地元の輸送に徹する」と言う方向が恐らくどこの会社にもあったのかもしれません。ですが、そこを突破した「しみずライナー」の成功が「駿府ライナー」を生み、その「駿府ライナー」が「渋谷・新宿ライナー静岡号」を生み出したのではないかと思います。西に目を転じれば、「東海道昼特急」の成功が「京阪神ドリーム静岡号」を生み出したのかもしれません。
 「ブーム」と言えばそこまでかもしれませんが、どうも「ブーム」とは言えないような気がするのが私の最近の感覚です。今まで放置プレイされていた地域の需要を顕在化されて来ただけであり、その需要を適切にくみ取った結果と言うのが実際の所だと思うのです(まぁ、「渋谷・新宿ライナー静岡号」や「しみずライナー」の東海便は『企業防衛』って言う面もあるかとは思いますが)。
 ただ、気にかかるのは東京への流出が容易になった事による地域産業への影響だと思うんですよね。変な事を言えば、「何かあったら東京まで買いに行けばいいや」って言うような発想をする消費者が今後増えてきた場合、静岡の専門店はどうやってその流出を食い止めるのかを考えなくてはならないと思う訳で。今でこそそんなに問題は起きてないのですが、これが10年後、20年後の静岡の商業にどんな影響を及ぼすのか気にかかる部分です。
 本来であれば、もう少し行政が「静岡への来客数をどうやって増やすのか」って言う事を考えなくちゃならないんじゃないのか?って思うのですよ。折角東京や新宿のまちの中を「静岡」だの「清水」だのって言った看板をぶら下げて走っている訳ですから、ヲタ的に見れば「美しくない」ラッピングをして、少しでも「域外の人に知って貰う」、「域外の人に来て貰う」って言う活動を本格的にしなくちゃならんのかなぁ・・・なんて思うんですよ。
 まぁ、ウダウダと書いてみましたw。