静岡の高速バス倉庫 アーカイブ

過去記事のアーカイブになっています。

この件に関して色々と思う所。

 車両に関しては既に(速報)の所で簡単に書いていますが、やはりヨーロッパ基準の車両を日本で運行していると言う事が結果的にどうだったのかな?と思う所があります。既にコメントで頂戴しているように「日本車のように過酷な使い方でも壊れない優れた製品と同じようなメンテレベルだと、やはり8〜9年落ちのネオプランではガタが来ると思います」と言うのは確かにあるのかな、と思います。実際、時々98年頃の車両に当たる事もあるのですが、趣味的には「何だ古いのかよ」と言いながらも、その走りはしっかりとメンテナンスをしていると言う事があったりとか、設計そのものがいいのか、古さを全く感じさせない走りをする車両ばかりです。そう思うと、やはり、勾配が至る所にある東名・名神を走らせるのが良かったのかどうかと言う部分で疑問がある訳で。正直後出しの嫌いもありますが、「青春メガドリーム号」として東京大阪間片道約500kmを一週間で2往復すると言うのは無理だったのかな、と思う部分があります。
 とは言え、今更過去の判断をどうこう言う訳でもありませんし、ましてやそんな事は言えない立場なので、少なくともこの事故の原因は徹底的に究明して再発防止をして欲しい所です。JRではだいぶ数も少なくなりましたが、貸切バスを持って居る会社では「スカイライナー」があるみたいですので、まずは「何故事故が起こったのか」、そして「どのようにすればこの手の事故が起きないのか」と言う事を徹底的に検証し、対策を打って欲しい所です。
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 この「青春メガドリーム号」の運行開始に至った背景と言うのを考えると、今でもそうですが、ウィラーなどの似非路線バス(俗称「ツアーバス」)が低価格を武器に今まで鉄道系バス会社が運行していた路線バスの市場に殴り込みにも近い形の参入をしてきた事、それが最大の原因です。そのほかにもつくばエクスプレスの開業と言うファクターもありましたが。一概に「ツアーバス」の進出が悪いとか、全ての原因であるとは言いません。実際に「プレミアムドリーム号」と言った今まででは考えられなかったタイプの車両も出てきたりとか、「青春ドリーム号」と言った格安便の登場もあった訳で、その部分ではユーザーにとって選択肢を広げるきっかけが出てきた事、これは確かにあると思いますし、他社では真似の出来ない「15mバスによる夜行便」と言うものを出す事が出来た、これはJRと言う大手バス会社の強みそのものであると思います。
 ですが、「ツアーバス」に関しては「1名から催行」とうたっているにも関わらず「車両故障のために運休」とか、「とにかく安い値段で走らせる」と言った事が行われていると言う話も聞いており、儲かっているのは旅行会社だけで現場で運行しているバス会社にとってはドライバーの負担等が大きい、と言った事も伝わってきます。
 会社の施策として「薄利多売」であることは否定しませんし、否定はできません。そこはそれぞれの会社の判断になりますので。ですが、今のような価格競争が続いて行くとその先にあるのは「安全な輸送」と言う商品を提供するドライバーさんに一番のしわ寄せが来るのではないでしょうか。これは正直な話、運輸業界だけに限らずどの業界にしても同じ構図です。自動車会社と下請会社の関係にしても同じです。散々コストダウンをさせておいて、「これではやってられない」と下請の社長さんが意を決して購買担当者に値上げをお願いしたら「じゃぁいいよ。お宅にゃ発注しないから」と言うような状況になってしまうのと一緒です(だからと言って下請けに100%依存をする体制を取っている企業はそれで問題なのです)。現場で支えているのは誰なのか?その支えている人が居るおかげで「自分達の商売も成り立っている」と言う考えをもう一度取り戻すべきなのかな?と思う所です。
 また、その下請け体質からの脱却を図ると言うのも必要なのではないでしょうか。例えば、多少コストはかかるものの地域のバス会社が撤退した路線を自分達で走らせてみるとかと言った「別の方策」を取るのも必要でしょう。正直、理想論を言っているのは分かりますが、そのような形で「何としてでも会社を維持する事」と言うのが今の時期には求められています。一人一人のドライバーさん、いや、働く人は、何だかんだ言ってもその仕事に「誇り」を持って居ると思いますし、その「誇り」があるが故に「多少厳しくても仕事を続ける事が出来る」と思う所で。そのような「誇り」を持てるように環境を変えていくこと、これが大事だと思います。
 バスが1台炎上した、確かに興味の無い方には「けが人や死人が出なかったのだから良かった」と言う事も出来るのかもしれません。ですが、その背景に横たわる社会状況を見ると、「けが人や死人が出なかったのだから良かった」と言う言葉だけで終わらせてしまっていいのか?と思います。適正な競争は必要です。ですが、その「競争」をする中でお互いに守らなくてはならない「安全」と言うものを疎かにしての「競争」であるとするならば、そんな競争はまっぴらご免です。
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 あるドライバーさんが話してくれた言葉、今でもその言葉を信じています。
「お客さんの命を預かっているのが、自分の誇りですよ」
 別にどの会社の肩を持つ事はしません。そんな「誇り」を持って運転しているドライバーさんを信じてこれからも高速バスに乗り続けるのかなと思います。