静岡の高速バス倉庫 アーカイブ

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「萌えっ子フリーきっぷで行く日本海ふさふさ街道」(まとめ)

 と言う訳で先日予告したとおりに「まとめ」的なものを書いてみようと思ったり。
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 あちこちでネタとなっているフリーきっぷなんですが、見た目と違い「非常に強力な使い勝手」を発揮しているのは言う間でもありません。自分が先日乗車した際には、こんな経路で行ってきた訳なんです。


■1日目
札幌16:10→留萌十字街18:51       特急はぼろ号15便(増毛経由)
留萌十字街18:58→羽幌ターミナル20:02 豊富留萌線快速幌延
(羽幌泊)
■2日目
羽幌ターミナル6:33→豊富駅9:08 豊富留萌線 豊富行
豊富駅10:35→羽幌ターミナル13:03   豊富留萌線 留萌行
本社ターミナル13:54→留萌駅15:14   豊富留萌線 留萌行
留萌駅15:45→元川町15:50       留萌別苅線 留萌市立病院行
元川町16:00→札幌18:15        特急はぼろ号25便(高速経由)


 正直かなりの強行軍であった事は否めません(何と言っても静岡空港からだと札幌16:10発の便が正直限界)し、「主な目的はバスに乗りに行った事だろ?」と言われれば否定できません。とは言え、今までは「特殊ツアー」であるとか「静岡の旅行会社主催のツアーの添乗員」でしか走った事が無かった日本海ふさふさ街道を「地元の足」である路線バスで走る事が出来て、その地域の「本当の顔」を何か見る事が出来たのかなぁ?と思う所がある訳で。


■バスの混み方はどんな感じだった?

 今回は木・金で乗って来た訳なのですが、やはり平日と言う事もあって羽幌→豊富間で乗ったバスの遠別→天塩高校間は流石に満席どころか立ち席まで出ていましたが、正直に言うと「ガラガラ」であったのは否めません。自分達以外にこの切符で乗っている人を見かける事はありませんでしたし、そのお客さんは、と言うとやはり病院通いのお年寄りの方であったりとか、自家用車では通勤が少し大変そうな方、って言うのが正直多かったです。


■3時間近くもバスに乗るけど・・・大丈夫?

 初めは「これでノンステップバスが来たら洒落にならないなぁ」などと言うように思っていましたが、写真のような所謂「観光型」の車両で豊富留萌線は来ていますし(ただし、「萌えっ子フリーきっぷ」が使用できない留萌市内の路線は普通の路線バスが走っています)、トイレなんかもドライバーさんに話をすれば主要ターミナルで待ってくれるような雰囲気でしたので(実際、乗車中にも「トイレの方は大丈夫ですか?」と言うように声をかけて頂きました)、長く乗ってもそちら方面の心配はないと思います。
 あと、確かに一般道を走るので「時間かかるなぁ」と言うように思われるかもしれませんが、そこは流石北海道。静岡のような所とは違いまして・・・






 車もかなり少ないですし、沿線の風景も本土とのそれとは全く違いますので、気がつけば「え、もう豊富なの?」って言うような雰囲気でした。走ってるのは確かに一般道ですが、高速道路とまでは行かないものの結構気持ちいいクルージングを楽しめる事が出来ます。是非、出来るのであれば俗称「添乗員席」もしくは「ヲタ席」と言えるドア後ろの一番前の席を取るのがお薦めですね。


■どんな所に行くのがいいの?
 これは正直人によって色々とあるとは思いますが・・・。個人的に是非見てきて欲しいと思う所を書いてみる事にします。
1 沿線の風景
 
 まずは何よりも沿線の風景を楽しんで欲しいものかと。本州ではなかなか見る事の出来ない風景を楽しむと言うのも一つの「見るべき所」ではないのかなぁと思います。その平原の中で牛がのんびりと草を噛む姿を見る事が出来ますし、本州とは違う「山」の風景なんて言うのを楽しむ、これも見所です。
 この「留萌豊富線」の風景を大きく分けると、留萌〜羽幌間での「海がすぐそばにある」風景、羽幌〜天塩間の「海と丘の風景」、そして、天塩〜豊富間の「丘陵地帯」と言うような3つに分かれると思います。どれも本州では見る事が出来ない風景ですよ。


2 どうせならばサロベツ原生花園へ自転車で。

 「萌えっ子フリーきっぷ」では豊富駅〜稚咲内間の「サロベツ線」も乗車可能ではありますが、如何せん本数が少ないです。そんな時は、人間に付いている最高の移動手段である「足」を使って、貸し自転車で気持ちいい空気・きもちいい時間を味わうのもまた一つの楽しみではないでしょうか。
 豊富駅前にある観光案内所では貸し自転車もやっていまして(300円/時間)、豊富駅から1時間30分もあればサロベツ原生花園のビジターセンターへ行く事が出来ます。今回は残念ながら途中で折り返してしまいましたが、是非自転車でのんびり走ってみて下さい、マジでこれはお薦め。
 そして、豊富駅に戻ってきたら観光案内所で売っている

 川島旅館の「白いプリン」を食べて一服するのをお薦めします。いや、こいつがマジで美味くて美味くて。某動画の市場欄に通販が貼られていますが、やっぱり現地で食べるのが最高に美味しいです。


3 羽幌で1泊も悪く無い。

 この「日本海ふさふさ街道」には宿泊できるような所がない、って言うのが結構問題のように言われています。事実自分も旅行屋さんフィルターを見るとそうだったのですが、「旅館=宿泊だけ」と割り切ってしまえば比較的安く泊まる事が出来ます。また、羽幌には漁港もあるのでそこで水揚げされた魚介類も当然(゚д゚)ウマーな訳で。刺身も旨いですし、海老(ボタン海老とか甘エビとか)も(゚д゚)ウマーですし、何と言ってもタコが美味い訳で。それらを使った「日本海エビタ(以下略」って言うようなものもあるのですが・・・やっぱり素材の味を楽しまないとウソだろJKな訳で。
 これはまんざらウソじゃありませんし、焼津出張の時は漁港の食堂で食べる昼ご飯を一番の楽しみにしているおいらが言う訳ですから、本当に美味いです。ビールでも飲みながら魚で一杯やるのもお薦めですよ。マジで。

 お昼ご飯だったら国道沿いにある某水産会社直営の食堂で海鮮丼を食うのもまた一興。1,200円でこの旨さだよと言う感じでしょうか。焼津小川の魚も美味いが、羽幌の魚も美味しいです。


■で、どうだったの?
 ここから先は少し真面目な事を書こうと思います。
 「北海道」と言うと、静岡県民から見ればやっぱり「札幌」であるとか「旭川」、「函館」、そして釧路湿原や富良野と言ったメジャーな観光地を思い浮かべる訳でして、事実自分が旅行会社にいた頃も「札幌雪祭り」とか言うようなツアーは何回か添乗に行きました。そんな中で一度行ったのが「利尻・礼文」のコースだったのですが、千歳空港から延々貸切バスに乗って稚内まで行った、それも雨が降る中と言う事で。ガイドさんも「この区間は特に何も無いですので」と言う事でお休みタイムだったのですが、それでも沿線にある風車に「あれ?」と思ったりとか、本州とは違う風景に「あれ?」と思う所はあった訳で。
 所が、その後になってひょんな事から札幌在住の友人経由で沿岸バスさんとのコネクションが出来る事となり、その時に言われた「一度遊びに来て下さいよ」と言うお誘いに10年経ってようやく応える事が出来た、と言うのが今回の「萌えふさ奇行」の一番の目的でした。表では「静岡空港開港記念」だの「ココロ」だの「オメデトウ」だの言ってましたが、最大の目的はそこでした。
 正直、所謂普通の観光客には「取っつきにくい」地域だと思います。特に目立つような見るものも無いですし、観光客に強くアピール出来るものも無い、そんな場所です。ですが、考えてみると北海道と言うか日本全体を見てみればそんな地域と言うのはどこにでもある訳ですが、何故ここまで話題になってるのか?と言う事を考えると「地元に根付いた余所者」が居る会社がある、って言う事ではないでしょうか。有り体に言えば色々と仕掛けているバス会社の一担当者の力、って言うようにも見えます。確かにそりゃそうですよね。「トエトのレトロなメロディバス」なんて言うのを仕掛けて地方の一バス会社がネタ半分とは言えども様々なメディアにニュースとして載る訳ですから。ただ、それがいわゆる「メディアと一体化した広報戦略」ではなく、「ユーザーと一体化した広報戦略」である、と言うのが、今までの地域振興とは全く違ったものではないかな、と思う所です。
 はぼろ号のアナウンスにニコ動発の曲を使ってみると言う試みや、羽幌町内の循環バスにこれまたニコ動発の曲を使ってみると言う試み、この両方の試みに関して色々と私もお手伝いをさせて貰いましたが(いや、一緒に調子に乗って遊ばせて貰ったって言うのが実際の所ですけど)、メディアへの露出度を広告費換算すると一体どうなるのかなぁ・・・と気になって計算をしてみたのですが、正直面倒臭くなってやめたのが実際の所で。要は、「どれだけ話題を提供できるのか?」って言う部分になってくると思います。ですが、これだけの試みを一企業がする、と言う事を考えると当然社内のマネジメントの問題もある訳ですし、「社の意思」としてやる以上は社内決裁も取らないとならない訳で。そう考えると同社のトップレベルの方が「何とかして話題を発信し、少しでも多くの人に自社の事を知って欲しい」と言う問題意識を根底に持っている、と言うように思う所で、担当者の発想力も非常に大きいとは思いますが、むしろそれ以上に社内の空気の流れの良さ、それを今回の2日間で強く感じました。
 ただ、気になる所も無いわけではありません。仕事でお邪魔した先の社長さんとも良くお話をさせて貰っているのですが、「仕事を属人化するのはリスクマネージメントとして問題だよ」と言う点なんです。まぁ、勤め人の自分としても担当事業のwebページを自分でしかいじれないって言うのはどうなのかな、と言っている本人も思うのですが(苦笑)、仮に担当者が何らかの事情で今している業務にタッチできなくなったらどうなるのかな?と言う所が見て居て非常に不安だったりします。ただ、人数規模的にも決して大きくない訳ですので、柔軟に対応出来るのではと思う所もあります。
 行政ではなかなか出来ない「沿線を一体とした地域全体の観光振興」を既に行政の先を行っている観光振興をやっている反面、地域の足を守る交通機関としての役目をどうやって果たしていくのか、これが一番大きな問題だと思う所です。確かに一見さんが来て貰えるような下地を作ったと思うのですが、決して内部補助が出来るような規模にまで行っているとは見た感じでは思えません(流石に決算書は見ておりませんので)。そんな中で「路線バス」と言う地域の足を守る、と言うのが最大の目標であると思いますし、「外部からお客さんにどうやって来て貰うか」と言う点、そして「どうやって路線バスに載って貰うか」と言う二つの目的を果たすために生まれたのが「萌えっ子フリーきっぷ」と言うものではないかなと思います。
 見た目で色々と言われているような気がしないでも無いですが、まずは話題先行でも全く問題は無いと思います。まずは「知って貰う」事が第1の目標ですし、その「知って貰う」と言う目標がクリア出来た訳ですから、次は「どうやって来て貰うか」、そこが第2の目標であると思います。そこに向けて「はぼろ号のアナウンス」や「トエトのレトロなメロディバス」、そして「羽幌炭坑跡」と言ったものになってくるのかと思いますが、その部分で「ユーザー側から見て【一度行ってみたい】」と言うものをどうやって提供していくのか、そこが最大の勘所になってくると個人的には思う所です。
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 何か長くなってしまいましたが、ここ最近の沿岸バスに関する一連の流れを見てみると、やっぱり「理に適っている」方法だと思いますし、真面目な観点から言っても評価できるのではないでしょうか。
 ですが、一趣味人として「うはwwww、これが沿岸クオリティwwww」とやっぱり言いたいわけですし、「中の人が垂らした餌だったら釣られるべきだろ、全力でwwww」とやっぱり言いながらまた遊びに行きたいなぁ、って言うのが偽らざる本音です。


 一人でも多くの方が「萌えっ子フリーきっぷ」と「特急はぼろ号」を使って留萌へ、羽幌へ、そして豊富へ「今まで知らなかった北海道」を探しに行くようになる事を、静岡の地から願っております。