静岡の高速バス倉庫 アーカイブ

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夕凪の街桜の国


夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

 メディア芸術祭絡みで「読んでみたい」と思っていたのに、すっかり忘れていた。で、id:sa-50さんが買って読んだ、って言うエントリを見て「おいらも読んでみるか」って言う事で購入。いや、初めは(別の意味で)可愛らしい絵のタッチだなぁ・・・って思っていたんですが。
 いざ読んでみると、う〜ん、と思わずにはいられないような真面目な話って言うか何というか。ある家族や地域が持っている歴史の上に形成されているレイヤーとしての人間のお話、って言うような感想を持ちました。まぁ、有り体に言えば広島であり、原爆であるんですが、どうしてもその呪縛から抜け出す事が出来ないと言う悲しさ、そして、その背景を知った上で前向きに歩いていこうとする「たくましさ」ってものを感じましたね。
 原爆や戦争ってものを一般化してしまう、って言うおいらのは正直褒められたものではないんですが、それでも敢えて一般化して考えてみれば、今のおいらから言えば「昔のお話」にしか過ぎない話です。実際に、おいらの両方の祖父は徴兵されませんでしたし、そんな部分で言えば「あの戦争」って言うのは自分にとって「本の上の出来事」であるとしか言えません。ですが、実際に話を聴くと戦場には行かなかったけど、祖父にしか出来ない仕事〜親父方の祖父は宮大工の棟梁をやっていて、色々と危ない目に遭いながらも仕事をしていたと言うし、お袋方の祖父は足が悪くて兵役には行けなかったものの、その代わり別の事をやっていたと言います〜をしていたわけで。
 そんな祖父たちが居てこそおいらの両親があり、そしておいらが居るワケで。普段はダメな事ばっかりをしていながらも、確かにその歴史の上に居るって言うのは間違いが無いと思っています。
 ある家族を知るためには、その家族が辿ってきた歴史や地域を見なくてはならないでしょうし、その家族の歴史を知るためには、その地域が辿ってきた歴史やその上に起こった様々な事を見なくてはなりません。ただ「歴史」として見るだけではなく、その歴史が現在に何をもたらしたのかを知らなくてはならないでしょうし、その「歴史」もある一つの観点から見るだけではなく、複合的な視野で見る事が必要だって思います。
 現実は確かに果てしなく厳しいかもしれない。けど、厳しい中に咲いた優しい花のような光景。その優しい光景を守るために一体何を出来るのだろうか。