静岡の高速バス倉庫 アーカイブ

過去記事のアーカイブになっています。

ある父親と子供のお話。

 その父親の子供は、大学を卒業してから社会人になり、二つ目の会社に入って「このままじゃいかん」と言う事に気付き、もう一度自分から勉強をしようと思って改めて学校に入り直しました。
 そして、2年間の間、仕事をしながら一生懸命に研究をして一本の論文を書き上げました。でも、流石に父親の前では「こんな論文を書いたんだけど」とは言う事が出来ずにいただけではなく、その研究の中で「こんな総合計画じゃダメだ。もっとしっかりと意見を汲んで作らなくっちゃならないのか?」と言う事を書いていました。出来の悪い子供が少し囓った知識で父親に立ち向かっていこうとするようなものです。
 ですが、その父親が死んでしまったとき、その子供は父親の書斎からある一冊の本を見つけました。そこには「この本は、自分の子供達だけではなく、自分の子供達をとりまく社会がより良い方向へ向かうために書いた」と言う父親自身の文字でそう書いてあったのです。
 その本を手にとった子供は、もう一度その本を改めて手に取って読み直しました。そこには、確かに父親の懐かしさがあると同時に、父親が子供達だけではなく、その子供達がこれから先生きていく未来のあるべき姿が書かれていたのです。
「親父の野郎、こんな本を遺しやがって・・・。」
 子供はそう思うと同時に、父親が自分に託した事を考えてみました。いつかはその日がやってくる。その日が来る前に、自分のやるべき事を全て為し遂げたいと。そして、その想いを子供達には継いで欲しい。このまちの子供たちが迎える明日のために。
 「父親と違う事を言っても構わない。だけど、最後の目的だけは見失う事はしたくない」
 そう思って、もう一度歩き出そうと思ったのです。
 明日、その父親が最後に見たかった風景の場所へ行っていきます。
 もう一度、自分の中で、歩くべき道を確かめるために。