静岡の高速バス倉庫 アーカイブ

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伝統の終焉。

 妙に格好良く書いていましたが来年3月18日に廃止になってしまう特急「東海」号について。
 確かにこの「東海」号には急行の頃から良く乗っておりました。親父の実家に行くのに153系の頃に乗ったりとか、沼津に住んでいた頃東京沼津間や静岡沼津間を乗ったりだとか、大学の合宿に行くのに静岡東京間を乗ったりだとか。そして、特急になってからは好きこのんで乗ってみたりとか色々やってみました。まぁ、そう言う意味では色んな想い出がこの「東海」号にはあったりします。
 とは言え、何でこの「東海」号が消えざるを得なかったのか、って言う事を少し真面目に考えてみたいと思うわけで。極端に言えば「いつ廃止になってもおかしくない列車だった」って言うように個人的には思っていたりします。
その1 新幹線と比べてみると。
 新幹線が走っているのに、何でわざわざ並行する区間に在来線の特急を走らせているのか?って思う部分もあるんですが、実際に静岡から鎌倉や大船、横浜方面に行くのには新幹線で新横浜まで出てから乗り換えって言うのを考えると、結構この「東海」号って言うのは使いやすい部分があるんですよね。とは言え、時間的な事を考えれば東京まで約2時間30分、新幹線より微妙に安い程度。おまけに、三島までだと新幹線より時間が確実にかかるのに特急料金は一緒な訳で。言い方は悪いですが、「特急料金を払うに値しない列車」であった、って言うのは仕方ない部分があるかと思います。同じ値段を払うんだったら「早いほうがいいよね」って言う訳になるですから、当然新幹線利用になる訳で。そう考えると、同じ会社が持っているリソースをわざわざ振り分けるのも勿体ない話。あと、新幹線に対して優位性がある区間であったとしても本数が少なかったりとか、時間帯が悪かったりとか、正直な話「使いたくても使えない」部分が存在していたのだと思います。
その2 高速バスの台頭
 個人的には「高速バスの台頭」、それもいわゆる「都市間バス」とカテゴライズされている系統が東名高速系統にも誕生したって言うのがあると思います。東名高速線での「都市間系統」としては東京〜富士宮系統(現:「ヤキソバエクスプレス」)がある訳で。で、その後になって東京〜清水系統「しみずライナー」、東京・新宿〜沼津系統、東京〜富士系統「かぐや姫エクスプレス」、新宿・渋谷〜浜松系統。まぁ、最後の浜松系統は別にしても、競争相手は見事なまでに新幹線、かつ、路線設定のイニシアティブを持っているのがJR東海バスではなくJRバス関東と言うJR東日本の子会社。それこそ、富士や沼津、清水って言うのは「新幹線を使って東京まで行くのが微妙に面倒くさい」訳で。
 元々、在来線の特急「東海」が生き残っていたのはそんな「微妙に面倒くさい」部分のFollowであったのだと思います。そんな元々担っていた役目を高速バスに任せる事によって「東海」号廃止への花道が敷かれていたような気がしないのでは無いです。バスは鉄道のようにある程度の輸送見込みがないと列車を設定できないと言うわけでも無いので、言い方は悪いですが「節操なく増便・減便が可能」って言う利点を生かしたって言うのが「東海」号駆逐の一因にもなったのでは無いでしょうか。そう、下手をすれば新幹線からもお客さんを容赦なく奪っている状況ですので。
 そう考えると、12/15の富士・富士宮ダイヤ改正、12/28の清水線増便ダイヤ改正は「東海」号廃止を睨んでのものであるかもしれません。
その3 「育てていく姿勢」があったのか?
 継ぎ足しなんですが、書いておきます。
 個人的にJR東海って企画乗車券の造成が下手なんじゃないのかな?って思うんです。以前、高速バスですが静岡駅〜大阪駅を走っていた昼行便の「京阪神昼特急静岡号」にしてもそうなんですが、商品設定を上手くやればもう少しお客さんが乗ったんじゃないのかな、と。それこそ、対高速バスの企画券として静岡〜東京間往復7,000円(指定席使用)、おまけに「東京山手線内フリー乗車券」なんて言う「東海号東京フリーきっぷ」なんて言う商品なんかあったら結構使う人居るんじゃないのかな?って思うんです(これに関しては「あさぎり」号でもそうなんですけどね。「あさぎり」でやるのなら東京メトロになるのかもしれないけど)。
 恐らくこんな企画乗車券は新幹線利用じゃ出来ないって思うんですわ。この「東海」号が熱海以東JR東日本管内を走る訳で、少なくとも空席のまま東日本管内を走らせるのはJR東海じゃなくってJR東日本にとってもメリットは無いって思うんです。多少使いにくい時間帯の列車ならば、多少お客さんに乗って貰うためのインセンティブ提供って言うのもして良かったのではないかと思うんです。それこそ、繁忙期の特定期間は使用不可にしても構わないでしょうし、席数限定にでもして良かったですから、「東海号」を使って貰うって言う方策をやったの?って思うんですよね・・・。
 恐らく、社内的には検討されていたとは思うんです。いや、こんな鉄ヲタが考えつくプランですからw。でも、「新幹線を売らないで、他社の切符を売るとはどう言う事だ!」って言う事でお蔵入りになってしまったのかな、なんて思っていたりもします。確かに東海道新幹線を売らないとJR東海は大変だ、って思うんですけどね。
 と言うか・・・シティホテルが午前0時過ぎになると「考えられない値段で売る」って言う事を何でやっているのか、って言う事を考えてみても良かったんじゃないのかな?って思うんですよね。確かに高速バスは安いですし、乗ってしまえば後は寝るだけ(俺だけかw)なんですが、鉄道のように時間が読める乗り物じゃないのはまた確かな訳で。そんな確実性に「インセンティブ」を少しだけくっつけて売れば結構売れたんじゃないのかな、なんて思います。正直、そう言う意味で「東海号を育てていこう」って言うような意識がJR東海の中にあったのかどうかは疑問ですよ。



 安い方か、早いほう。
 確かにこの選択肢は自分でも迷う部分はあります。仕事で東京行くのなら「新幹線」が確実ですし、プライベートで遊びに行くのなら「しみずライナー」や「ドリーム静岡・浜松号」と言う選択をするので、普通の方なら仕方ない部分もあるのですが・・・何かこう、しっくり来ないなぁって思います。色んな選択肢があっていいんじゃないのかな?って思う部分もあります。
 一番大事なのは「選択肢」を持ち得るかどうか、って言う事なんじゃないでしょうか。鉄道やバスと言った交通機関だけではなく、他のあらゆる社会のシステムにおいて。その中で「競争」によって全般的な便益の向上もあるかもしれませんし。
 普段は葬式鉄はやらない人間なのですが、今回ばっかりはどうもそう言っていられません。3月の最期の日まで看取っていきたい方向です。