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質的産業力とCSR


 静岡文化芸術大の坂本光司教授の研究室がこのほど発表した47都道府県の「質的産業力」の調査で、静岡県は多くの項目で高い評価だったものの、従業員1万人当たりの労働災害発生件数などは低い評点で弱点も多いことが、さらに細かな分析で分かった。同研究室は「これからの時代は労働災害発生件数や障害者雇用率など、弱者に優しい産業の質を有しているかが大切」として、低位項目の改善と施策の実践を呼び掛けている。
 地域経済の規模ではなく質に重点を置き、21項目を10点満点で採点して分析した。総合1位は愛知県。静岡県は公示企業比率、完全失業率、従業員1人当たり小売商業販売額、平均月間給与額が9点となるなど、総合6位で上位に食い込んだ。一方で、労働災害発生件数や黒字企業比率、開業率、専門的・技術的職業従事者比率は3?4点と低く、障害者雇用率も5点だった。この結果、企業の収益体質や安全に配慮した職場環境、障害者の社会進出などに課題を残した。
 1位の愛知県は18項目で7?10点と、高い評点を記録。2位は東京都で以下、神奈川県、大阪府、福岡県が続き、太平洋ベルト地帯に位置する地域が上位を占めた。逆に総合評点が最も低かったのは高知県。ワースト2位以下は秋田県徳島県山形県青森県の順で東北、四国地方の低迷が目立った。
「弱者に優しく」 「質的産業力」 本県は総合6位静岡新聞 1/5
 この坂本教授、話ではかつてはウチの会社に勤務していた事があったらしい。
 それはそれで別の話ではあるが、「質的産業力」と言うのは面白い論点ではないだろうか。企業経営においては、やはり収益であるとか生産数、技術力と言う面に関して目が行くものであるが、企業も地域における「市民」と言う事を考えると、市民としてどのように貢献しているのかって言うのも重要な観点になってくると思う。企業が収益を挙げる事によって法人住民税が地域の自治体に入ると言う直接的な効果も見る事が出来るが、やはりその分配を如何にして行い、地域内に落とすような仕組みの評価も必要ではあると思うし、地域が抱える多くの問題(例えば障害者雇用の問題とか)を、企業がどのような形で解決しなくてはならないのか、そちらの視点に関しても考える必要は確かに感じる。
 そんな中で正月休み中の日経新聞を読んでいると「CSR広告」が出ていたのを思い出す。個人的にはこの「質的産業力」はCSRと密接に関連してくる部分があると思うのだが(相関性に関する検討はしてないが)、果たしてこの「CSR」をマーケティングに使ってしまっていいのだろうか、と言うような疑問を感じている。
 企業にとって「存続」と言うのは従業員と言うステークホルダーに対する義務であると思うし、「存続させるため」のマーケティングと言う面では、如何に顧客に選んで貰うのかを考えなくてはならないのもまた事実である。しかし、だからと言って「環境に配慮しています」って言うのを真っ正面に出して広告を打つと言うのは本来企業の行うべき宣伝なのであろうか(環境だけじゃない点は理解済み)。
 個人的には「地域社会に対する果たすべき当たり前の役割」なんじゃないのか、って思う部分を感じる。すなわち、行為としては当たり前のなすべきものであり、それをやった上で本来業務、って言うように感じる。何か本質を誤ったような広告が出ているのに違和感を感じてしまう訳で。
 この「質的産業力」は、結局個々の企業が地域社会に対して果たしている「責任」を数値化したものの総和なんじゃないだろうか、と思う所である。