静岡の高速バス倉庫 アーカイブ

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ステージ練習


 駿府公園のお堀端にさいているつつじ(だったか?)も綺麗に咲いている。だけど、ここのツツジが綺麗に咲いているのを知ったのは現役を終えてからの話だった。それまでは、ここのツツジを見たことは無かった。梅雨の鬱陶しさを迎える前の心地いい一時を精一杯身体に感じて咲いているような気がする。
 そう、明日に迫ったOBバンドのステージを目前にして、今日は最後のステージ練習。あの学校を出るまで、ステージ練習といえば本番前日にやるものだと思っていた。まぁ、ここらへんに関してはそれぞれのバンドの違いがあるので何とも言えない部分があるのだが。

 泣いても笑っても、今日が最後の練習。と言うわけでホールに向かう。
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 今日の練習は2時間程度。
 今までの練習に比較すれば正直な所時間的には少ない。考えてみればそのはずで、今まで練習を積んできた事の再確認にしか過ぎないのだから。やるべき事をやった・・・とはとてもではないが言えないが、今の自分の音楽についてのスタートラインを切ったこのバンド。やっぱり思い入れは誰よりもあるって言っても間違いではないと思う。
 先輩にしごかれながら山の上で練習した中学時代。少し中だるみしながらも、毎朝朝練に出て静岡の町並みと駿河湾を眺めながら屋上でロングトーンをしたした高校の頃。そして、一番最後の定期演奏会で何故か自分に回ってきたSoloパートを必死になって練習した最後の定期演奏会の直前。15年以上も昔の話かもしれない。だけど、その一瞬一瞬を今でもつい昨日のように思い出す事が出来る。そして、ステージ。
 会場のお客さんに圧倒されそうな気がした。だけど、今まで積み重ねたものを出すだけだと思ってあくまで平常心で吹ききった事。泣きそうになりながらも「泣くのは演奏を終えてからだ」と必死になって3rdClarinetで全体を支えながら吹ききった事も。
 それから15年近く経って、ふとしたきっかけで知った今所属しているオケ。
 決して上手とは言えないし、現役で楽器をやっているみんなには叶わないと正直思う。おまけに静岡から東京までの足代もかかったりとかしていたりする。時々言われるのは「地元でやりゃぁいいじゃん」。確かにそうかもしれない。だけど、何で今でもそうやって音楽を続けているのかな・・・って思うと、そこにはやっぱり一つの答えしかない。
「電車もバスも好きだけど、やっぱり音楽が好き」
これに尽きるんじゃないのかな、って。電車やバスだけが好きなら、音楽をやる必要なんかは無いし、音楽だけ好きなら地元でやればいい。両方とも好きだし、そんな「他に好きなもの」を許容してくれる空気がある所、それがあの頃のバンドと今のオケには共通してあるような気がしないでも無い。
 だけど、これだけは確実だと思う。
 12歳、初めて吹奏楽と言うものに触れた20年前の自分を受け入れてくれたバンドがあったからこそ、今の自分が居るって言う事。6年間、色んな事があったけど、その中で支えてくれた先輩が居たって言う事や、自分の拙い技量に付いてきてくれた後輩が居てくれたって言う事。そして、音楽的にだけではなく、色んな事を教えてくれた顧問の先生が居るって言う事や、好き勝手に自分の好きなことをやっている自分を認めてくれている自分の親が居るって言う事。下手な自分だけど、演奏会に聴きに来てくれる友達が居るって言う事。今所属しているオケでヲタ話をしながらも、一緒に音楽を創ろうとやっている仲間がいると言う事。自分のやっている音楽に関わっていなくても、自分に関わってくれている人が居る事。
 決して上手いとは言えない。だけど、そんな色んな人に「ありがとう。そしてこれからもよろしく。」そんな意味を込めて明日はステージに上がりたい。本当にそう思う。
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 明日はこのステージの上から、そんな想いを届けたい。