静岡の高速バス倉庫 アーカイブ

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まじめに考えてみた。

 昨日のエントリは「とりあえず行ってきたよ」的な報告になる訳で、決してイベントを楽しむのが目的ではない所が実際の話。「楽しめるイベント」で無くてはならないかとは思うが、昨日行って来た【「らき☆すた」のブランチ&公式参拝in鷲宮】の持つ「地域資源」と言う側面からの意味と言うものを考えてみたい。
 元々鷲宮と言うところは関東一古い神社と言われる「鷲宮神社」の前に形成された門前町ではあるものの、都心部への通勤者が多いベッドタウンとしての位置づけにあると思われる。しかし、どうしても距離的に都心部からは遠くなっており、その通勤圏としては比較的外縁部に位置していると言って差し支えはない。
 外縁部で起こっている現象として全国的に共通している事象としては、「ロードサイド店舗」や「大規模ショッピングセンター」と言うような商業立地の影響により、旧来の中心市街地であった駅前(鷲宮町の場合には東武伊勢崎線鷲宮駅か?)の凋落が激しい状況となっている。実際、7月にも同地を訪問しているが、駅前はこのような様子であった。

 恐らく、東武ストアか何かが駅前にあったと思われるが、既に閉店しておりただ「建物だけがそこに残っている」状況であった。中心市街地における中核的な集客施設がこのような状況であるが故に、駅から鷲宮神社まで向かう参道も実際の所も通行量は自動車も含めて少ないのが現状であると思われる(ただし、当日は神社祭典があり、それなりににぎわっていた事を補記しておく)。

 この写真もどうように7月22日に撮影したものであり、昨日のエントリで挙げたような光景を想像するのは困難である(しかし、関東最古の神社と言う点を勘案すると、初詣の来客数は地元を中心として多いのではないだろうか)。
 現在、中小企業庁や各都道府県の産業支援機関においては「地域資源活用」と言う施策を多く実施している。この「地域資源活用」とは、「地域の中に存在する様々な独自性を活かし、それらを産業活動に反映させる事によって地域の活性化を目指す」と言うものであり、国内全体を見ると様々な地域で様々な取り組みが行われているものの、多くの「地域資源」と言うものが農林水産をメインとする「第一次産業」を主体とするものであり、言い方としては非常に悪いものの「どんぐりの背比べ」と言う感じがしないでもない(とは言え、この部分において徹底的な差別化を図る事によって成功している事例も存在しており、一概にこれを否定するものではない)。
 また、第二次産業を主体とする「地域資源」の活用も行われており、これは主に中京地区における「産業観光」と言う動きにその具体例を見かける事が可能である。興味のある方は「産業観光」で検索をしてその概要をつかんで欲しい所ではある。
 では、第3次産業を「地域資源」として見た場合はどうであろうか。
 第三次産業はいわゆるサービス業を一般的にはさすが、広義で見た場合には「コンテンツ産業」もこの第三次産業に含まれると見て差し支えはないであろう。それを考えると、京都は太秦にある東映太秦映画村も「地域資源」として見る事が可能であるものの、最近になって「地域資源」と言う見方が生まれてきたと思われる。他にも「都市」そのものが持つコンテンツの魅力に依存するものとして、東京や横浜と言った高度集積都市もあるが、これらの地域に共通するものは「地域そのものが魅力を持つ」と言う点を挙げる事が可能ではないだろうか。すなわち、都市が持つコンテンツの魅力によって誘客を図る点である。
 では、今回の【「らき☆すた」のブランチ&公式参拝in鷲宮】が開催された鷲宮町はどうであろうか。
 極端に言えば「地域そのものの魅力」を外部の者には感じさせる事がない、そのような地域である。言葉は悪いが、大都市近郊に存在する「中途半端な田舎」と言うのが実際の所である。しかしながら、そのような地域に対していきなり「らき☆すた」と言うアニメ作品がもたらされると言う点、これは全く新しい「地域資源」と定義づける事が可能ではないだろうか。確かに「アニメ作品の舞台」であると言う点では、国内にも木崎湖(長野県大町市)や清水(静岡市清水区)、太宰府(福岡県太宰府市)と言った地域もあるが、それらの地域は既に「他の地域資源を持っている」と言う事が可能であり、直接比較出来るものではないと考える。
 そんな中で今回鷲宮町商工会が主催して当該イベントを実施した訳ではあるが、来場者数は約3,500名と言う事や、地元に落としたお金を考えるとその効果は確かに大きかったと思う。しかし、誰が一番+になったのかと言えば、「らき☆すた」と言う作品のファンでも版権会社でも商工会でもなく、鷲宮町と言う自治体そのものであったのではないだろうか。イベントそのものの予算的には恐らく100万円は行ってないと思う状況ではあると思うが、それでも日本全国に「鷲宮町」と言う地域の名前をPR出来た事だけでもその費用以上の効果を得られたのではないかと思う所である。
 確かに今回の【「らき☆すた」のブランチ&公式参拝in鷲宮】は成功したと言っても過言ではないと思う。だが、今後の問題点を挙げるとすれば「どのように継続して地域をPRして行くのか」と言う点では無いか。すなわち、「らき☆すた」と言う作品の舞台となっている近隣の幸手市春日部市と一体的に「どうやって活用していくのか」と言う点や、地域住民との折り合いをどうやってつけるのか、と言う点である。
 インタビューの中で「住民もそんなに悪い印象を持ってないですよ」と言う話を伺う事が出来たが、この「住民の印象」をどうやって維持するのか、そして、特定のイベント開催時だけではなく、ファンが春日部近辺まで来たときに「せっかくだから足を伸ばしてみようか」と言うような雰囲気を作るのか、これが最大の問題ではないか。
単純に地元商業者だけで解決できる問題ではない。行政と商工業者、そして地域住民が「どうやって活用するか」と言う事を真摯に考える事こそ必要であり、派生的に地域が抱えるその他様々な問題を解決するためのアリーナとしての役目も果たす事が出来るのではないだろうか。
 また、版権業者もこのような地域の取り組みに対して「地域貢献」としての支援が必要であるのは言うまでもない。行政機関や商工会・商工会議所と言った公的性格を持つ機関がキャラクターを使用するときの版権料を大幅に減免するとか言うような支援も必要であると思う。言うなれば「間接的な支援」と言う観点である。そのような様々なアクターが集まって「地域」と言うものを考える事が最も求められているのではないだろうか。


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