静岡の高速バス倉庫 アーカイブ

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新静岡→白樺荘入口 500系統急行静岡井川線


車両 :鳥坂538号車(しずてつジャストライン 鳥坂営業所)
乗務員:しずてつジャストライン 鳥坂営業所
新静岡→横沢

去年の夏、しずてつが井川線用に投入した新車。南アルプスの自然を守るために環境性能の良い車両を入れた訳だが、結果として今月末に路線そのものは廃止になってしまう(夏には直行便として運行されるみたいではあるが)。このままだと乗る機会も無いなぁ、と思った事と、どうせ井川に行くのだったら温泉に行くかと言う事でこのバスに乗り込んだ。
新静岡を出ると一旦静岡駅前に入り、そこから普段の通勤経路をしばらく走る。静岡駅前を出た段階で乗客数はわずかに7人程度。いつも乗っている駿府ライナーと比べるのは酷かもしれないが、かたや満席で東京を目指し、かたや10人に満たない乗客数で奥大井を目指す。
バス好きな人はゆっくりしていってね

 見慣れたビルの前を走り、時には信号に捕まりながら先へと進む。この急行静岡井川線、本来ならば南アルプス登山口である畑薙第一ダムまで向かう系統ではあるが、生憎畑薙第一ダム直前の土砂崩れのために大型車両が通行止めとなっている関係上、一個手前の畑薙ロッジ止まりとなっている。また、途中の六番停留所までは「急行」と名乗るだけあって主要バス停しか停車しない、しずてつでは最後の「急行」を名乗る系統である。
 元々は大井川鉄道と井川静岡間を運行していたが、その頃は井川を朝出る系統もあったため井川に居る人が静岡の市街地に出るのにも便利だったという。しかし、自動車の増加によって乗客が少なくなってしまったため、大井川鉄道が10年以上前に撤退し、それ以来静岡鉄道しずてつジャストライン静岡市補助金を受けながら運行をしている路線である。夏には南アルプス登山者のために増便・続行便を運行するものの、それ以外の時は乗客もまばらであり、今年1月には5月31日を以て路線を廃止すると言う発表があった。
 この路線、自分自身何回か乗車した事がある。
 毎年春休みに井川少年自然の家でやっていた中学・高校の吹奏楽部の合宿に顔を出す時に、新静岡から井川少年自然の家まで乗ったと言うのがそれであるが、やはり自分自身も井川に行くと言えば「自家用車」をチョイスしてしまう。だけど、最後に乗っておきたいと言うのが今回の奇行の目的一つ目である。

 バスはつい1週間ほど前に出張で来た所を走る(笑)。とは言ってもまだまだこのあたりは静岡の住宅街である。バスの本数も比較的多くある所。さらに少し走ると

 新東名の静岡インターチェンジ。ここまで出来ているとは正直思っていなかった。また、この新東名につながる主要地方道山脇大谷線の建設も進んでいる。それこそここらへんに来るのは滅多に無い話なので「こんな風になっていたとは」と言うのが実感。

 更に安倍川を上流へと安倍街道を走る。車も少なくなっており、徐々に山並みが近づいて来る。流石にここのあたりまで来ると民家は集落毎にまとまっており、連続していると言う事は無くなる。一般路線である安倍線はこの付近の集落を丹念に回っているが、静岡井川線は「急行」と言う名前の通りバイパスを通って井川へと足を進める。流石に本数も少なくなる俵沢-六番バス停-以降は各駅停車になるが。

 梅ケ島街道と安倍街道は、この玉機橋交差点で分かれる。井川線はこの玉機橋交差点を左折して安倍川を渡る。道路も狭くなり、周辺の風景も茶畑が目立つ農村の風景に変わってくる。

 茶畑、山、そして青い空。絶好のドライブ日和と言っても過言ではない。すれ違う車も少なくなり、徐々に高度を上げてくると新静岡から約1時間、横沢のバス停に到着する。新静岡からの安倍線はここが終点。

 これから目の前に見える山に向けてのアタックを始める。流石に静岡井川線の車両にはトイレは設置されてないのでこで10分休憩。そとに出て伸びをすると、空気もまちのそれとは全く異なっている。そう、気持ちいい。
■横沢→井川駅
「ここから先、クーラーの運転を止めさせて頂きます」
へぇ、環境保護のためかぁ。まぁ、窓開ければ涼しいからいいか。なんて思っていたのですが
「クーラーをかけると坂道を上れなくなりますで」
うは、そう言う理由ですかwwww。とは言え、この言葉が嘘でない事は横沢を出るとすぐに分かる。横沢の次は「富士見峠」と言うバス停まで約40分程度走る事になるが、富士見峠の標高は約1,150m。横沢の標高は分からないが、正直「こんな所を走るのかよ」と言う狭い道・急な坂道になってくる。いや、それこそ「静岡県道189号三ツ峰落合線を走ってみた」なんて言う動画でも作ってみたくなるほどの道路である。林の中を右に左にとうねうね走り、小さな沢を橋で渡って高度をどんどん上げて行く。そんな中でも井川からの車と何回かすれ違う事になるが、その度に乗務している車掌さんが車内からではあるもののドライバーさんを誘導すると言う光景を見る事ができる。

この写真の白いガードレールの部分が道路であるが、右側はもう山、左側は沢と言う状況。自分自身もこの道は何回も車でハンドルを握って走った事があるが、自家用車でも正直な話怖い道である。すれ違いがあったらどうしようとか、相手がダンプカーだったら嫌だなぁなんて。おまけに、横沢富士見峠間は民家が全くなく(別荘っぽいものはあるが)、携帯電話は余裕で圏外になる(FOMAの場合)。事故が起こったらマジでシャレにならない区間であるが、この道を多少は難儀しながらも何事も無かったかのように走っているドライバーさんの技量は正直凄いと言わざるを得ない。

富士見峠に向かって走って行く間、車窓が開けるとこんな光景が見える。ここらへんまで来るとかなり富士見峠に近づいて来ており、稜線っぽいところを走っている事になるのだが、向こうにはほぼ同じ高さの山を眺める事が出来る。そして、空と雲に少し近づいて来る事を感じる。

富士見峠バス停(井川方面)。この峠が安倍川水系大井川水系分水嶺となり、ここから先は井川駅前へと向けて再び九十九折の坂道を下って行く。

 何となく高原っぽい雰囲気を見せているが・・・そんな事は全くない。本当に狭い部分をこうやって開墾して農作物の栽培をしている訳である。近所にお店は全くないし、一体どうやっているのだろうか、何か少し気にならないでもない。流石にここまで来ると外気は涼しいを越えて冷たくなる。半袖ポロシャツ1枚で来て失敗だったかなぁ、なんて思う瞬間である。森の中を右に左に走りながら峠を下って行くと、井川湖が見える。

大井川をせき止めて作った井川ダムの湖。水量が多い時には井川ダムから井川本村まで渡船が出るというが、今日は運休との事。井川ダム堰堤を走り抜ければ井川駅前。10分程度休憩。

 ここで乗客のうち5名が下車。話を伺うとこれから井川線の「奥大井湖上駅」を歩いて金谷に抜けるという。まぁ、普通だったらそうやって金谷に抜けるのがゴールデンルートなんだろうけど、奥大井はこっから先が面白い所なんですけどね。とは言え、バスも一日1往復しか走ってないので・・・行きにくい部分ではあります。
井川駅前→白樺荘入口
乗客2名、乗務員2名と言う身軽な姿になった畑薙ロッジ行は更に奥に向かう。

井川駅前を出てしばらく走ると、井川の中心部を抜ける。それこそ昔はここに大井川鉄道のバス車庫があったんだな、なんて思わせてくれるような車庫があったりとかする。本当にのどかなまちなみを、井川湖に沿って走って行くと「田代」と言う集落に出てくる。ここにはオートキャンプ場があったりとかするので、ひょっとしたら名前を聞いた事がある人もあるかもしれない。そんな田代集落の一番外れにあるバス停が「八木尾又」と言うバス停。このバス停こそ人家がある最後のバス停と言っても間違いは無い。
ここから先、田代第一〜第七トンネルと言ういかにも「ダム建設用に建設されたトンネル」を通り抜け、目の下に大井川の渓谷を眺めつつ、新緑が一番美しい(と自分では思う)区間を走る。

元々この道、本来の終点である畑薙第一ダムの建設のために作られた道である訳で。そこを路線バスで行くと言うのはなかなか滅多にできる事ではない。実際、距離的にはそんなに無いので時間もかからないのでは?と思う所ではあるが、山肌にへばりつくように道路が敷かれているので、スピードも当然ながらそんなに出ない。実際、井川駅前からは結構時間がかかる。
そして、11:30を少し過ぎた頃、今日の目的地である「白樺荘入口」バス停に到着。

バスはここでお客さんを全員下ろして(って言っても二人だけしか居ないけど)、終点の畑薙ロッジへと向かう。
「ありがとうございました・・・じゃなくて、行ってきます」
「お気をつけて、いってらっしゃい」
さて、ようやく辿り着きましたよ。新静岡から3時間15分。東京や新宿まで余裕で行ってしまう時間ですが・・・まだ静岡市葵区内です。ええ、間違いありません。