静岡の高速バス倉庫 アーカイブ

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問題の切り分け(2日目)

 と言う訳で引き続き「問題の切り分け」を行ってみたいと思いますが、その前にコメントで頂いた意見を紹介させて頂きたいと思います。


財産権にしろ肖像権にしろ何らかの権利があるにせよ、権利を主張できるのは権原を有する者です。
横浜市の財産だとしたら、横浜市長の名で権利を主張しなければなりません。
どこの誰だか分からない人間の言うことなんて聞く必要はないし、従う必要はありません。
仮に裁判になっても、無権利者には原告としての適格はありませんからね。
脅しをかけて消去を強要するのであれば、強要罪で訴えるのもひとつの手でしょう。
12/1付けエントリへのコメントより
アドバイスありがとうございます。「権原」と言う言葉の意味が「一定の法律行為、または事実行為をすることを正当化する法律上の原因」である事を考えると、財産所有者(もしくは財産所有者が管理を委託している者)によって建築物の撮影行為が禁止されているものに関しては、「一切の撮影は罷り成らぬ」事になり、明示的に禁止されてないものにおいては著作権法上で撮影及び利用を認められている事から「撮影・利用は一切問題無い」と言う事を導き出す事が可能になります。
恐らく、自然風景に関しても財産(この場合は立木や土地と考えるものでしょう)所有者が「撮影禁止」としている場合には(恐らく自然風景で撮影禁止と言うのは現実的に困難かと思いますが)、建築物と同様に撮影禁止、そうで無ければ撮影可能と判断すべきかと思います。また、所有者が判然としない自然風景に関しては、その地域を管轄する行政機関の禁止命令が無い場合には「撮影可能」と判断すべきかと考えます。
このコメントを頂戴し、検討した結果として上記エントリの通りに「人物が入ってない」かつ「自然風景」もしくは「建築物」を「自分自身で」撮影した画像の掲載を再開する事とさせて頂きました。
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では、昨日の続きです。

 確かに撮影をした際、人が入ってしまったので「何とかならないかな」とズームを調整しておりました。確かに自分自身にも配慮が足りなかった点もあり、素直に従った方が良いと判断したため、その削除要請に応じ、デジカメの画面を提示しながら削除を行いました。問題はその後です。
「まだ写真あるでしょ!全部消しなさい!通行人にだって肖像権あるんですから!」
 ここで肖像権と言う言葉が出て来るとは正直思ってもいませんでした。確かに他の写真もあったのですが、いずれも今日出かけた「ボーカロイドマスター6」の後で出かけた山下公園ベイブリッジ、いちょうの黄葉した道路の写真などで、意図して人間を撮影したものではありませんでした。しかしながら、それまで削除しろと言う事でした。その当たりになると周辺の人の目線も集まってきており、それを拒めるような雰囲気ではありませんでした。確かにやましい写真は一切撮影しておりません。ですが、その状況を見ると逆に自分の身の危険(冤罪)を感じたが故であります。結局は削除せざるを得なくなりました。
11/30付けエントリより
 ここで「肖像権」と言う言葉が出てきます。「肖像権」と言う言葉を法律の中で探してみても出て来ません。現状では判例法の中で定義されているのが実情ではあるみたいなのですが、色々と探していくとこの説明が非常に分かりやすいものでしたので引用してみます。

著作権用語辞典によると「わが国の実定法上、明文の規定はなく判例により承認されているもの。人格権としての肖像権と財産権としての肖像権に分類される。」とありますが、後者は普通パブリシティに関する権利と称されています。
権利に関するQ&A Q4.肖像権てなんですか?■株式会社東宝ステラ【日映アーカイブ】内「ライブラリー窓口」情報 12/2
 この説明によると「人格権としての肖像権」、「財産権としての肖像権」と二つ存在するとあり、簡単に言ってしまえば「プライバシーの保護」と「商品価値の保護」と言う観点になるものと考える事が可能になります。今回のケースに関して言えば、誰か有名人の写真を無断で撮影した訳でもないので、「人格権」としての肖像権の問題を検討すべきであると考えます。後、更に検討すべき問題として「プライバシー保護意識の高まりとの関連」も存在します。すなわち、今回の事案の中において「通行人にだって肖像権あるんですから!」と言う一言にその部分が集約されるのではないかと思うのですが、例えば学校における「緊急連絡網」への住所や電話番号の掲載拒否と言った、正直に言えば信じられない程過剰な「プライバシー保護」と言うものを唱える人も居る訳で、実際に撮影をしているときにそのような人にまた出会うとは思いません。そのような場合の対策に関しても検討をする必要があるでしょう。

(中略)
 もとより、自分自身としては非常に不本意な判断であり、感情的には受け入れがたいものであります。しかしながら、Blogと言うものがあくまで「個人の趣味」として認知されている以上、そこには「報道」や「情報伝達機関」としての役割は正式に認められているものではありません。よって、そのような機関との同一線上で議論してはならないものであると考えます(実態としてどうであっても、あくまで「個人Blog」です)。企業であれば、仮に訴訟に応訴する事があったとしても、個人が仮に訴訟を応訴すると言う事になれば、それは本来の生活の中に大きく影響するものであると同時に、場合によっては現在の収入が保証されなくなる事態も考えられます。
11/30付けエントリより
 次に検討すべきなのは「公開」と言う行為に関してです。半ば答えは出ているのかもしれませんが、"Blog"と言うものの公共性と個人性、この部分をどのように勘案し、実際に画像の公開を行う際にどのような点に注意する必要があるのか、この部分になってきます。
 確かにBlogは「個人のメディア」であると言われていますが、「メディア」に存在する「公共性」と、「個人」と言う相容れない二つの概念をどのように考えるのか、これも先々においては必要になってくると思いますし、今回の案件を一つの契機として再検討しなくてはならないかと思います。
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 さしあたって以上のような問題切り分けを前提とした上で、解決を要する点として以下のものを挙げる事が可能です。

1 駅構内での鉄道車両やバス車両を撮影して構わないのか?(土地に関する財産権的観点から)
2 鉄道施設車両やバス車両を被写体とする撮影の是非
   →鉄道車両やバス車両は「建築物」に準じる扱いとして構わないのか?
3 人物を撮影目的としない場合の「肖像権保護」をどのように行えばいいのか?
4 公開に当たって何に気を付けなくてはならないのか?
5 「公共性」と「個人」、どのように折り合いを付けていくのか?

5番に関しては・・・正直マジで論文1本書けそうな勢いの難しい問題だとおもうのですが、それでも、何らかの形で答えに至る道筋を考える事が、究極的な問題解決に近づく一歩になるのではないかと思います。