そういえばさ。

　会社帰りに中学・高校の同じクラブ（吹奏楽部でした）の後輩にばったり会う。おいらもそいつも旅行会社勤務だったんだけど、今では大学を出てすぐに入った旅行会社からそれぞれ転職している訳で。自分は自分でとある団体に転職し、そいつはそいつで別の旅行会社に転職している。
　色々と話を聞くと「やっぱり色んな面で昔とは違ってるよ」って言う事になってくる訳で。確かにそりゃそうだ。大学を出てからかれこれ13年近く経っている訳で、これだけインターネットが普及するとは思ってなかった訳だし、そのインターネットの普及によって生活の様々な部分が変わって行っている。その変貌ぶりを10年前に誰が想像付くか？って言われればそりゃ想像付かないわな。仮に「これからはネットへの対応もしなくちゃならないですよ」と言いながらおいらは本業の傍らでwebページを土曜出勤の時iMacを会社に持ち込んでwebページを作ってたりとかしてたし。何とかやろうと思っても結局「その時の数字を上げなくちゃならない」トップにその考えを理解して貰う事は当時は出来ず（いや、数字をあげなくちゃならないって言うのは分かるんですよ。でも、その先に「どんな展開があるのか」ってものを考えないとならないのがトップの仕事だと思う）、全体の流れを見て居る中で「このままじゃ旅行業って不味いんじゃね？」って言う不安も持って旅行業から引っ込んだ理由の一つだったりするんだけど・・・まさかここまでの超展開になるって言うのはぶっちゃけ思ってなかった。


　で、そんな感じで旅行業界を辞めて転職したコンサルみたいな金融機関みたいな今の職場。


　その当時、一番苦手だったトップの人を相手に「御社の【売り】って何ですか？」って事を聞きながら色々と仕事をしている。少なくとも10年前には全く想像付かなかった訳だし、よもやさんすうが苦手な(9)なおいらがこんな仕事していいの？って思っている。だけど仕事だからやるしかない。


　で、自分の通っていた中学・高校って言うのは私学だったのでやっぱり「社長の息子」や「医者の息子」が正直多かった。当然中には勤め人の息子も居た訳なんだけど、その頃は「社長って凄いなぁ」なんて言う事を思っていた。何が凄いのかって言う事は良くわからないけど、「凄い」って思ったのは正直な所。その後、旅行会社でまがりなりにも営業の仕事をしていただけに「社長」と会って話をするって言うのはやっぱりビクビクものだった、と言うか担当者にたどり着くまでが大変なんですよ、あの業界はorz。


　そして、今。
　仕事の案件で若造（と思っている自分涙目ｗ）が自分の親父に近い年齢の社長を捕まえて「この部分不味いんじゃないんですかねぇ」なんて言う話を時にはしていたり、「この部分は売りですよ」って言う事の話をしている。正直信じられないって言われれば信じられない。単純にそう言う「立場の仕事をしている」って割り切っているけど、どこかで「本当にいいの？」って思う所もある。そんな中で今思うのが


「社長ってやっぱ凄いや」って言うのと「何だ、ただのおっさんじゃねぇか」。


　この二つの相反する感覚だったりする。
　仕事が回っていれば役員報酬を貰ってそこそこいい生活が出来る。だけど、何かあったら借入金の連帯保証人になっているのは「個人としての」社長さん。破産でも何でもしたら当然保証人となっている以上債務を弁済しないとならない。そこが「経営者の経営者たる所以」なのかもしれないけど、そういう部分では「自分の家族」だけではなく「会社」、そして「従業員の家族」に対する責任を負っている訳だから、その部分で多少役員報酬を高く取っても仕方ないんじゃねぇのって思う訳で、そこが「社長ってやっぱ凄いや」って思う理由。
　だけど、話をすると「社長」だからって言って気取ったふりをすることもなく、従業員と一緒に加工機の前に向かって発注を受けている仕事をしていたりとか、若い社員に「ここはこうするんだ」って事を実地で教えているって言う、デスクワークと現場の差はあれども「会社」って言う枠の中では毎日当たり前にやっているような仕事をこなしている人も居る。そして、雑談なんかじゃ本当にどうでもいいような話題に笑っていたりするおっちゃんが居る。そう、家に帰ってきた親父が寝っ転がってテレビを見ているようなその雰囲気だったりする。これが「何だ、ただのおっさんじゃねぇか」って言う理由。


　まぁ、実際そんなもんなんだろうねぇって思う。
　別に「社長」だから偉いとは毛頭思わないけど、会社じゃ色んなもんに責任を持って「社長じゃなきゃできない仕事」をやっている、そして普段の「個人」に帰れば自分の好きなことを楽しんでいる、そんな感じなんだろう。
　10年前の自分がこの事に気付いていたら、ひょっとしたら今頃も旅行会社で働いていたかもしれない。20年前の自分がこの事に気付いていたら、社長の息子だからって言って特別扱いなんかしなかったんだろう。


　別に悔やむことじゃないし、だからと言ってどうこうって言う訳じゃないけど、そんな事に気付くのって案外時間がかかるもんなんだなぁとふと思った。それだけの話。