静岡の高速バス倉庫 アーカイブ

過去記事のアーカイブになっています。

何か複雑な気が。

 とりあえずこの手の記事のお約束として。


 このエントリは中の人の個人的な意見表明を記したものであり、中の人の所属団体やその他関係する団体の意見を代弁して書いたものではない事をご了解の上でお読み下さい。


民主党衆院選マニフェスト政権公約)で明記した「高速道路の無料化」を、北海道と九州で来年度から先行実施する方針を固めた。複数の関係筋が14日、明らかにした。利用状況や経済効果をにらみながら無料化路線を段階的に拡大していく考えだ。
(以下略)
高速無料化 北海道、九州で先行実施へ 民主方針産経新聞(msn)(9/15確認)
 確かに全国的な視野で見た場合には九州と北海道で実施すると言うのは分かりますが、九州の場合には既にこんな記事が出ています。

 民主党マニフェストで掲げる「高速道路無料化」が実現されると、バス利用者が減って経営に深刻な問題がでるとして、九州バス協会(82社加盟)の竹島和幸会長らが10日、国土交通省を訪れ、無料化しないよう要望した。
 同協会によると、春からの高速道路の「一律千円」値下げで、5月の大型連休中は九州地方で1割利用が減り、お盆も路線によっては3割以上落ち込んだという。高速バスの利益をローカル線の維持に充てている会社も多いといい、「生活者の足も維持できなくなる」と訴えた。
 同省自動車交通局は「新政権下での判断になるので、現時点ではいかんともしがたいが、業界への影響は注視していきたい」としている。
「高速無料化やめて」九州バス協会、国交省に要望■asahi.com(9/15確認)
 九州島内は静岡や東京とは桁違いに高速バスネットワークが形成されています。バス好きにしてみれば天神バスセンターの出入り口に居れば一日中飽きる事が無い程なんですが、現状の高速道路土休日1,000円と言う施策によって利用客が30%も減少と言うのはただ事ではありません。この30%の利用客減が売上30%減と直結しているのかどうかは分かりませんが、去年秋口からの急速な景気減速の影響を被った企業の売上減少とほぼ同じくらいです。それも、比較的減少幅が少なかった企業でなんですが(実際には4割5割当たり前と言う売上減少が多くの企業です)。
 確かに「高速道路無料化」と言うのはインパクトは大きいものがあると思います。今まで「高速代高いからなぁ」と言う事でなかなか出かけられなかった人たちが出かけられるようになり、今まで高速代に費やしていたお金を出かけた先に落とす事が出来る訳ですから。それはそれで経済効果となると思いますし、仮にこの無料化が普通車だけではなくトラックにも波及する事になれば、物流コストの低減にもなりますので効果は出て来ると思います。
 ですが、単純に「だから高速道路無料化」と言うのを言ってしまっていいのか?と思う部分もある訳で。
 まず一つ目は「回り回って誰かが影響を被る」って言う点。
 これは後者の記事のバス協会のスタンスと一緒です。現在のバス業界が「高速路線バス」によって収益を挙げ、その収益を内部補助によって一般路線の維持に回している点。結果として高速路線バスの収益が低下すれば一般路線の維持も出来なくなり、そのツケは地元路線の利用者に回って来ます。実際自分なんかは一般路線バスが無い所に住んでいますが、そのせいで最近は高年齢になった家庭の転居が多く発生している状況もあったりする所で。折角買った我が家を「足が無くなるから」と言う理由で手放し、また新しいマンションを買わなくてはならない・・・と言うのはどう考えても変ではないかと。それはそれでお金が回るからいい、と言う意見もあるでしょうが、さて、これでどれだけの資産が流出する事やら。結局はバス会社ではなく地域の住民がその負担をしなくちゃならない(それも高速道路を使わない人が)と言う点です。
 二つめは「高速道路を使うメリットが無くなる」と言う点。
 仕事でしょっちゅう静岡県内の東名高速道路を自分で運転して移動したり、高速バスに乗ってしゅっちゅう東京に行ったりするのですが、どうも最近事故や渋滞が多くなったなぁと思うのです。特に顕著なのが日曜夜の下り線の渋滞。今まではそんな事が無かったのですが「沼津静岡間15km渋滞」と言う電光掲示に出くわす事が多かったりとかするのです。極端な例を言えば、それこそ8/7に経験した「静岡東京間8時間」と言う自分にとっては最長不倒所要時間。無料化されれば確かにメリットは多いのでしょうけど、そのメリットを相殺するような事故や渋滞による所要時間の増加の発生が見込まれる訳で、その分が凄いムダになると言うか何と言うか、そんな気がするんです。お金が絡まない個人的レベルであってもそうですから、それこそ物流業界にとっては「時間が読めなくなる」と言う事態が発生するでしょうし、その物流の不安定さが企業の生産現場にも影響を及ぼす(恐らくカンバン方式で部品を納入している企業だと生産計画を一から見直さないとならなくなるのでは、と思う所)事も考えられるだけに。良かれと思ってやった事が逆に問題になってしまうと言う可能性もあるのかなぁと。


 メリットとデメリットを考えると、正直どうなんでしょうね。「高速無料化」をマニフェストとして言い切った上に「国民の生活が第一」と言い切った今度の政権与党さんがどんな具合でこの二律背反なところを解消してくれるのか、個人的には楽しみな所であります。