静岡の高速バス倉庫 アーカイブ

過去記事のアーカイブになっています。

浜松市における地域産業の現状〜産業集積と地域経済環境〜(補遺)

 と言う訳で、上のエントリまでは11/20に発表させて頂いたものですが、以下少し補足させて頂きます。

浜松市における産業集積形成の系譜
1 工業発展の系譜
 後にも出てきますが「浜松の産業集積はキセキである」と言う議論がありますが、確かにこれは否むことはできません。ただ、その「キセキ」のバックには全部繋がりがある、その繋がりを分析する事によって「工業発展の系譜」を見ることが出来るものであり、自動車産業と楽器産業、見たところ全く繋がりのないような産業であっても根底で繋がっていると言う点をまずは頭の中においていただきたい、そう思ってこのページを入れました。図表は浜松市webページより引用しましたが、現在の掲載ページはここになります。
 
2 先行産業の存在-繊維業と製材業-
 この部分が「浜松のキセキ」を形成する一つのベースにあるのでは無いかと考えています。
 元々水利が悪かったと言うことや、天竜川の上流に「天竜杉」と言う品質の良い材木が出てきた所があったこと、そして、東海道が通っていた、と言うのがあるとではないでしょうか。これらの産業がまずベースにあったと言う点もありますが、個人的には「鉄道院浜松工場」がこの地にできた、と言う事の意味が実は大きいと思い、特に「浜松工場」の話を書きました。
 鉄道と言う交通機関は「輸送」と言う側面から見る事もできますが、産業の面から見た場合には「様々な産業の複合体」と言うことができます。0系新幹線は戦争中の戦闘機技術があって開発されたと言うものもありますし、余り知られてないかもしれませんが、今の大型バスやトラックの技術は、当時の国鉄自動車局が「高速道路で安定して走行できる車両性能」を昭和30年代のはじめにメーカーと共同研究を行い、名神ハイウェイバス・東名ハイウェイバスの専用車両を開発して、そこから民生用にその技術が応用されていったと言うものもあります。
 自分が鉄道・バス好き、と言うのもありますが・・・それ以上に、「当時の先端技術が鉄道に多く存在し、その技術の場としての浜松」と言うものがあった、と言うのをご理解頂きたく思うのです。

3 機械産業への進化
 ここで言いたかったのは「スズキ」と「トヨタ」と言う日本を代表する2つの自動車メーカーが同じ「力織機」からスタートしていたと言うところと、「用途が全く違う」ものを生み出して、結果的にお互いが自動車に発展しても「全く違う市場」で棲み分けていると言うことの面白さ、そして、「戦争」と言う外部条件の中で「第二創業」が起こったと言うところです。
 企業はその外部要因によって自らの方向性を決める(「戦略に組織は従う」とか「組織に戦略が従う」とかありますが)訳なのですが、この部分を体現しているのがまさにこの時期なのかなと思うのです。

4 楽器産業の発展
 この部分は基調講演の方が詳しいと思いますので、そちらのトゥギャッターをご覧頂ければと思います。
 ただ、現在のデジタル楽器のベースにあるのは「テレビジョン技術」であると思うのです。現在の静大工学部で開発されたと言うのは、当時の既存産業に「新しい付加価値を付け加える」と言う意味で考えるとかなり大きいものがあるのではないでしょうか。「なんでも新しいものを積極的に取り入れていこう」と言うものは確かにあるかと思います。

5 報徳思想を基盤としたソーシャル・キャピタルの存在
 この部分に関しては「関係ないだろ」と言う学説を持つ先生もいますが、個人的には「地域の中に存在した共通認識」(=暗黙知)の存在は大きいのではないか?と思うのです。なおかつ、その「暗黙知」が「暗黙知」として閉鎖的なものになっていないどころか、外部から来た人も受け入れるだけの度量の広さ、そこにあるものは何か?と言うのを考えると「報徳思想」になるのではないかと考えています。
 この部分、書くと正直ポスターでは収まらない部分があり、相当端折った内容になっています。ごめんなさい。

■浜松の地域産業の現状
 このポスターの原版を作ったのは去年の話ですので、リーマンショック東日本大震災、急激な円高の進行と言う外部要因を考えると「状況は更に悪化しているのでは?」と個人的に考えています。中心市街地の求心力の低下の一方で郊外に多く展開するショッピングセンターと言うものもありますし、それを考えるためには浜松市内の道路交通網なども本当は話をしないとならない部分ですが。
 後、行動様式の変化と言うのは色々とありますが、その中でも「高速路線バス」と言う観点が自分にとって非常に捉えやすい部分がありますので、これをメインに捉えて見ました。この「高速路線バス」の本数は、以前は全くなかったものであったのですが、それがここまで増えていると言う事は「市内の交通状況の変化」だけではなく、その背景にある「行動様式の変化」と言う部分まで考えないと話が出来ないものだと思うのです。

・・・ということで後書きだか何だか分からないものを書いて見ましたが、この辺りに関しては徐々にかいてみたく思います。