静岡の高速バス倉庫 アーカイブ

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生まれ変わるとき。

麻酔が切れた。うっすらと目を開けてみる。
天井が見える。そして、まどの外では仲間たちが仕事へ向けて寝ている様子が見える。

ベッドに起きあがってみる。よし、何とか身体は動きそうだ。だけどまだ、どこかまだ少し身体のあちこちに違和感を感じている自分が居る訳で。そこに、先生がやってきた。
「お、麻酔も切れたか。あと少しは休んでいなさい。いきなり動くと身体に障るから」
「はい、分かりました。」
「どうだ、新しい自分の姿を見てみるか?」
「ええ、見てみたいですけど・・・何かまだ、頭がぼぉーっとしていて。」
「まぁ、仕方ない。正直かなり大きい手術だったからなぁ・・・。」
***
 その数日後、すっかり身体の調子は戻った。「そろそろ退院だな」と先生は言ってくれた。
「そうだ、これが君の新しい服だ。今日からはこの服を着て仕事をするんだぞ」
そう言って渡してくれたのは真っ白な制服。
・・・・・・
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あれ?この制服真っ白なんですけど?と言うか、今まで着ていた制服の派手さは全くなくなっていた。
「先生、この制服は一体なんですか?」
「いやぁ、前の制服だと何か凄い派手だったもんだからな。これからはシックって言うか落ち着いた感じの中のも華やかさを出したいって思って、君たちだけのために作ったんだよ」
「え、私たちのためだけです・・・か?」
「ああ、そうだ。頑張ってまた、色んなお客さんのために走ってこい」
「はい、ありがとうございます!」
そう言って、先生は病院で見送ってくれた。
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「おかえりー・・・あれ?その服はどうしたの?」
「いや、これが今日からの私たちの新しい制服だって」
 みんな同じ事を言う。確かにこんな真っ白な服を着ているのって私たち位しか居ないし、以前の制服の面影・・・って言えば、"Premium Dream"って言うロゴだけだったりする。
「どうかなぁ・・・似合う?」
「うーん、イマイチ。だってそれじゃ、私たちの仲間って思われないよ!」
「でもさ、ツバメのマークは入っているから分かる人には分かるんじゃないの?」
仲間たちの間でも意見が割れている。だけど、最後にはこう言ってくれるんだ。
「あんたはね、私たちの目標なのかもしれないね・・・。中身も大きく変わったし、制服も全く違う。だけど、その中身も制服も、あんたたちだからこそ似合うから。精一杯頑張りなさいよ!」
 と先輩の温かくも厳しい励まし。でも、先輩って言っても私たちとそんなに年齢は実は変わらなかったりする。それぞれの仕事をそれぞれの場面で精一杯やるしかない、それが私たちの仕事なんだから。
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 けれども、結構この仕事って結構大変だったりする。週末は夜東京まで出かけて、少しお昼寝?をした後、昼前には東京から大阪へ帰ってくる。そしてまた休む間も無く東京へ。そんなのの繰り返しだったりする訳で。平日はそれでも一日お昼寝する事はできるけどね(苦笑)。
 東名を走っていると色んな子とあったりする。みんながみんな「何その制服、格好いい」って言ってくれる訳じゃないけど、少しお話しすると「そうなんだ、その制服に負けないように頑張りな!私もあんたに負けちゃらんないね」って言ってくれたりする。
 今日も、この真っ白い服に色んな人の想いを乗せて。


西日本JRバス 大阪高速管理所 「プレミアム昼特急号」744-0975号車