静岡の高速バス倉庫 アーカイブ

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発想の転換と外部の視点

 ヨコハマ経済新聞さんのこの記事。


 横浜市中区に存在する寿地区は、山下公園や元町といった横浜の華やかなイメージとは異なる「ハマのもう一つの顔」である。日雇い労働者向けの簡易宿泊施設が居並ぶ寿地区は「ドヤ街」と呼ばれ、そこにはホームレスも含めて7000人前後の人が暮らしている。だが今、その寿地区の再生を図るべくあるプロジェクトが進行している。寿のドヤ(簡易宿泊所)にツーリストを誘致する「横浜ホステルビレッジ」がそれだ。
寿地区が「ドヤの街」から「ヤドの街」へ。
地域再生を目指す「横浜ホステルビレッジ」
■8/18確認
 横浜にもこんな所がある、って言う話を聞いた事があるにはあるんだが、それこそ個人的には西成のイメージがかなり強烈にあり、なかなか分からない部分もあったのは事実。実際、自分自身にとって「横浜」って言う所のイメージは、やはり「港町」であり、元町や中華街、そしてみなとみらいって言った中心部や、日吉や江田って言った地域である。恐らく、自分の身の回りに居る人に話を聞いてみても「知らない」って言われるのが関の山だと思う。正直、この記事を見てからググってみて詳細を知ったって言う具合だし。
 まぁ、正直言えば「行ってみたい」って言うようには思えないし、少なくとも興味本位で立ち入ってはならない場所だと思うのだが、確かにこの「ホステルビレッジ」って言う考え方は面白いと思う。普通であれば「行政による支援の対象」となる地域である所が、自らの持っているリソースを活かして「自分たちで自らを支援する」って言う事へ持って行く事の可能性、そんな方法論が存在するような気がしてならない。
 恐らく、これは内部の人間だけでは上手くいかなかったのではないだろうか。そう、外部の視点を持っている者がそのプロジェクトに参画する事によって初めて回転するものだと思う。例えばこんなくだり。

 ボランティアとして提携先のゲストハウスに住み込みで常駐し、宿泊客の面倒を見ている神奈川大学大学院の赤羽孝太さんによれば「海外には治安の悪い場所なんてたくさんありますから、彼らから見れば寿は安全な街だと感じるのでは。僕も住んでみて分かりましたが、実際、治安も悪くないし、寿に住む人たちは良くも悪くも人間臭い。外国人ツーリストたちに気軽に話しかけ、缶コーヒーをおごってあげたりする光景をよく見かけます。他の街ではあまり見られない気安さや人情がこの街にはまだあって、僕自身とても気に入って快適に過ごしています」。
 果たしてこの言葉がどこまで真実を示しているかどうかって言うのは正直言って分からないが、なるほど確かに海外と比較してみれば「治安はいい」訳で。確かに中には不逞の輩も居るかもしれないが、それは他の場所でも一緒の事。なおかつ、個別化が進んでいる他の地域と比較した際、場合によっては逆に治安がいい事だってあり得るのかもしれない。恐らく、この海外との比較って言うのは内部の人間の視点だけでは分からないはず。外部の人間が入ってきて初めて生まれてくる考え方になるのではないだろうか。
 一般化して話をしてみよう。
 その地域地域にはそれぞれの特徴があるだろう。その特質は地域の中に存在する人間にとっては「どうにもならないね」とか「こんなもん嫌いだ」って言うようにしか取られない部分がある。これはどこだってそう。いい所もあれば悪い所もある。だが、その地域が閉鎖的であれば閉鎖的であるほど、外部の視点を持ってくる事によってその「嫌いな所」が実はトンでもなくリソースとしては強いものを持つ可能性だってあり得る。
 だが、最大の問題はこれらの「外部の視点」を導入する事に対する抵抗なんじゃないだろうか。確かに内部で強い紐帯を持っている地域においては、ヨソ者は排除される傾向にあるし、そのヨソ者が進めていく事に対する反感と言うのは非常に強いものがあるのではないだろうか。そんな中で「外部の視点」を受け入れるだけの度量をどのように醸成して行くのか、それが究極的な問題である。
 確かに外部の視点が入る事によって失われていくものがあるのかもしれない。その部分と現状で解決しなくてはならない問題とのバランスをどう考えるのか、確かに難しい話だと思う。でも、都市間競争、いや、同じ都市の中における地域間競争に打ち勝つには「何を解決しなくてはならないのか」と言う問題提起の能力を地域が持たなくてはならない、それを考えさせられる話ではないだろうか。