静岡の高速バス倉庫 アーカイブ

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昨日のお話。

 昨日は「浜松創造都市協議会設立記念シンポジウム「創造都市・浜松を目指して」」を聴講しに浜松まで行っていたのですが、いきなり「ボーカロイド」やら「初音ミク」だのと言う言葉が主催者挨拶の中に出てきてぶったまげた、と言う事を昨日はネタ半分で書いていたのですが、何でそんな話が出てきたのか?と言う背景に一切昨日は触れてなかったので、今日はそこらへんの話を書いてみます。
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 浜松市静岡市と同じように政令指定都市となっていますが、静岡市とはまた違った面白い所が多くある都市です。市の面積は日本で2番目に広い都市であったりとか(サイズは伊豆半島と同じ程度)、水窪や佐久間と言った「山の中にある地域」もあれば、舘山寺温泉のように観光地化されている所もありますし、その一方でスズキの本社工場やヤマハの本社(ピアノ工場は磐田に移転しましたが)もあったりするなど、色々な要素を持っている都市です。静岡市は確かに広いけど、その人口集中域は東海道線東名高速沿いにしかなかったりとか、観光地も決して多くなかったりとか言う訳でどちらかと言えば「政治経済の中心だけ」って言うような印象を受けるのとは大違いです。
 浜松市の主要産業と言えばスズキの「自動車」、ホンダの「バイク」(現在は九州に製造拠点が移ってしまいましたが)、ヤマハの「楽器」と言う事があり、特に「楽器産業」に関しては日本で一番最初にオルガンを作られた場所と言う事もあり、1980年代から「音楽のまち」と言う事を積極的にPRして来ています。実際に浜松市内には「楽器博物館」と言う音楽好きの人ならば「なにこれwww」と言って一日楽しめるような場所もありますし、浜松国際ピアノコンクールと言う世界的な知名度を持つに至ったピアノコンクールもあれば、ハママツ・ジャズ・ウィークと言うような国内のジャズフェスティバルの先駆け的なイベントもやっていたりします。
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 そんな中で、平成21年3月に「浜松市文化振興ビジョン」が策定され、同市の目指していく文化振興の方向性が以下のように定められました。


(1)創造都市・浜松の実現
*さまざまな市民や団体と行政の協働によって支えられる、足腰の強い文化・芸術活動が都市の創造的活動を刺激する都市
*文化がもたらす創造性がさまざまな分野でのイノベーションをもたらし、産業の活性化やまちづくりをけん引する都市
*特に、若手アーティストやデザイナー、クリエーターといった創造的産業に従事する人々が活躍し、ステップアップを図る可能性を秘めた、文化的な魅力を感じる都市
*文化芸術活動が消費、蓄積、創造という循環のなかで再生産されるとともに、国内外に発信できる都市ブランドを有する都市
(2)文化の多様性が活力となる都市・浜松
多様性(地理的条件、国籍、障がい等)から生じる社会的な課題を、文化を通して解決していく都市
*都市の文化、山間地域の文化、海辺の文化など、豊かな自然にはぐくまれた多様な文化資産を享受できる都市
*外国人市民による文化芸術活動や異文化の共存による新たな文化芸術活動を生み出す都市
(3)音楽の都・浜松
*これまで培ってきた音楽文化の蓄積を重要な都市資産として、音楽を通したさまざまな人々の交流のステージとなる都市
*市内各所で音楽に親しむ機会があり、レベルの高い演奏会が日常的に開催される都市
*音楽に関わる情報や専門知識、人的なつながりを求めて音楽家や音楽を志す若者たちが集まる都市
*音楽家や音楽関連ビジネスの起業のチャンスが得やすい都市
浜松市文化振興ビジョン 6.ビジョンの基本目標浜松市(9/23確認)
 昨日の「浜松創造都市協議会設立記念シンポジウム「創造都市・浜松を目指して」」と言うシンポジウムは、このような動きをどうやって創出していくのか、と言うキックオフのイベントになっていました。とりあえず新聞報道ではこんな感じ。

 浜松市の産学官組織「浜松創造都市協議会」の設立記念シンポジウムが22日、同市中区の静岡文化芸術大で開かれた。芸術・文化産業を振興し、既存産業を高度化する「創造都市」を目指して有識者がパネル討論を行った。
 協議会は同大研究プロジェクトチームの呼び掛けで、市、浜松商工会議所、市文化振興財団と設立した。今後、文化イベントの支援のほか、人材育成、交流を促進する「創造拠点地区」の形成や研究会の開催といった事業を展開する。
 討論では「浜松版・創造都市の作り方」を演題に意見交換した。パネリストは「ものづくりのまちである浜松は科学技術力などは高いが、音楽、芸術文化は弱い。まちがもっと豊かになる必要がある」などと指摘。「浜松市の特性である多様性から新しい文化の誕生を期待したい」「外国や他都市から持ち込まれた文化でなく、自分たちで創造し、発信することが都市の再生につながる」といった意見が上がった。
新文化創造し発信へ 有識者が意見交換 浜松静岡新聞(9/23確認)
 前々からこの「創造都市」と言うもののあり方には興味関心があり、ただ単にモノを企業が作って売るだけではなく、そのモノにどうやって付加価値を乗っけて行かないと不味いのでは、と思っていた所なんですが、このような「創造都市」と言う概念を導入していこうと言う動きが浜松で出てきたのは「やっぱり浜松が先鞭を付けたか」と思っています。少なくとも静岡市じゃ出て来ないだろうと(静岡市の事を悪く言うつもりは全くないのですが、見て居て色んな部分で歯がゆい部分も多くあったり)。
 一言で言ってしまえば「浜松と言う都市が持っているポテンシャルをどう活かして都市間競争に勝っていくのか」と言う素材を「文化」と言うキーワードから探して、それをやってみようと言う動き、そう個人的には理解しています。おおざっぱに言って。その主体は何も行政だけがやるのではなく、企業がやってもいいし地域住民がやってもいいし、その方向性に賛同する人がやってもいい、要するに「面白い事を【やりたい】」と言う人が色んな立場の人を巻き込んでやって行こうと言う動きなのかな、と思います。
 浜松の一番大きなポイントって言うのは「多様性」と言う部分では無いでしょうか。
 パネリストの人も言って居ましたが「全国で二番目の広さを持つ地勢的側面」、そして「日本人だけではなくブラジル人やペルー人がごく当たり前に地域の中に居る【人】と言う側面」、産業屋さんの自分から見た場合には「光や音楽関係の最先端技術から町工場レベルの機械産業まで一つの地域の中にある【多様な技術】と言う側面」どう見ても静岡県内の市町の中でここまで色々あるのは浜松市位しか無いんじゃね?と思う所なんですよ。ですが、その反面として「広すぎるもんで色々と不便だったり」とか「日本人と外国人の摩擦が大きい」、「それぞれの産業の間での交流がなかなか取れない」と言う問題点も抱えるだけに、その問題を「文化」と言うもので解決していこうと言うものが、浜松市が目指す「創造都市」と言うものではないかと思う所なんですよね。
 そんな中で「音楽」と言うものを一つの「地域資源」として捉えていこうと言うのが「(3)音楽の都・浜松」と言うものだ、と言う説明がありましたが、実際に「そんな音楽の都、なんて言うのは出来る訳ないだろ、看板降ろせ」とパネリストの人が噛みついていましたが、自分もそれは同感だったりします。既に本家がある云々と言う訳では無く、「文化」と「音楽」と言う言葉から繋がってくるものとして「いわゆるクラシック音楽の振興」と言う余りに固定化された概念しか出て来ないんじゃね?と思う所があるんです。そのパネリストの人は「どうせだったらブラジリアンミュージックフェスタでも市が主催して開催すれば、相当浜松の知名度は上がるよ」って言うような事も言っていた訳で。なるほど、「多様性」と「音楽」を結びつけて行くと言う方向性なのかな、と思う所なんですよ。そう言うように「他の都市でやっている事をやる」のではなく「浜松だからこそ出来るもの」や「浜松に来ないと体験出来ないようなもの」をどうやって創り上げていくのか、そんな部分が大きな話になってくるのではないかと思う所なんです。
 他にも色々と興味深い議論がありました。室内楽団の活動を盛んにし、今までなかなか音楽を生で聴けないような人たちの所で演奏すると言う「芸術のアウトリーチ」に関する話もあれば、「浜松は何にしても通過点にしか過ぎない」と言うような話もありましたし、それこそ「これからどうやって【創造都市・浜松】と言うものを創り上げて行くのか」という事を必死になって・・・いや、楽しみながらも真剣に考えていると言うのが伝わってきました。と言うか、俺のやりたいのって案外こんな話じゃね?と思ったりしているのですが。
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 後は個人的な感想なんぞを。
 確かに「文化芸術」って言うのは非常に大事だと思いますし、そこらへんを「効率性優先」の社会とどうやって調和させていくのか、と言うのが問題であると思うのですが、変な言い方ですが「どうやって経済活動の中に組み入れていくのか」と言う部分なのかな、と思う所です。こう言う事を言うと「芸術を何かに利用するな」とか「芸術の持つ表現の自由を縛るな」って言うように怒られるかもしれないのですが、基本的には「どうやって食べていくのか」と言う事もあるでしょうし、その創作活動を行う原資をどうやって得るのか?と言うものが存在するのかと思います。
 バブル期の頃や少し前までは「企業メセナ」と言う事で大企業からの支援もありましたが、今ではそこまで出来る企業も正直少なくなっているのかと思います。(アサヒビール資生堂と言った企業の活動は見て居て凄いと思いますが)そんな中でどうやって日々稼いでいくのか、言い方は悪いですが「孤高の存在」ではなく「市民としての存在」にあり方を変えないとならないのでは?と思う部分があるんですよね。アーティストがその活動で対価を得る事が出来る社会になるべきだと思うのですが、そのためには一般市民がアーティストの活動を支援する、いや、支援と言う言葉ではなく「経済活動の中でその作品を楽しめる」のが当たり前になるような社会になって欲しいと思いますし、アーティストも自分の「表現したいこと」を曲げることなく、どうすれば社会に受け入れられる存在になるのか、そこを考えていく事が必要ではと思う訳で。
 正直、難しいでしょうけど、その部分が「何事も無かったかのように」当たり前にあるような地域を作る事が出来れば、浜松と言う都市の持つ魅力って言うのは相当上がるのではないかな、などと思ったりしています。
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 ついでだから個人的な妄想も書いちゃえ。twitterでネタ半分書いてましたが。

 こんなイベントやれば面白くね?「ボーカロイドブラジリアンミュージックフェスタin浜松」
 ジャンルはサンバなどのブラジリアンミュージック限定で、ヤマハの開発したボーカロイド技術を使ってるソフトに歌わせるのが条件。オケは生音だろうが打ち込みだろうが何でも構わない。つか、ポルトガル語のデータベースをどうやって作るのかとか言うような技術的な問題は別にして。


 予選はニコニコ動画あたりにうpして審査員とかコメント数とかの指標を元にしてやるんだろうけど、本戦はそれぞれのPに浜松まで来て貰ってDJプレイよろしく現地でやるのもいいだろし、それこそ「ブラジリアンミュージックフェスタ」なんかやるんだったらその時に流して一番盛り上がった曲が優勝、なんて。
 とまぁ、ネタ半分帰りの東海道線の中で書いて垂れ流しをしていたんですが、折角生まれた「ボーカロイド」って言う技術は浜松市の宝(=静岡県の宝、と自分は勝手に思ってますw)な訳ですから、この分野を活かした音楽コンクールなんて言うのも悪く無いんじゃね?なんて思うんですよね。確かに「ネット」と言う媒体を通して広まったと言う経緯はありますが、敢えてその技術が生まれた「浜松」と言う所でフェスタ(コンクールだと言い方が悪いw)をしてみるって言うのも一つの方法ですし、そこにVJの要素やらメディアアートの要素やら色々と巻き込んでSonarみたいなイベントを浜松で出来ればマジで面白いんじゃね?なんて思ったり。
 つか、そんなイベントやるんだったら、もう音楽のジャンルは何でもありw。いきなり室内楽なんかもあればミクノポップもあれば・・・スナック初音だろうと何でもおk的なノリで。