静岡の高速バス倉庫 アーカイブ

過去記事のアーカイブになっています。

どっちを選ぶかって、ね。

少し前に仕事でとある団体の偉いさんを訪問した時にこんな話をしました。

偉い人「同じアイスクリームでも、Aと言う地元資本のスーパーでは200円、Bと言う都会資本のスーパーでは150円で売ってるんだけど、その理由って考えたことある?」
中の人「都会資本って言う事は店舗数が多いですよね。そうなるとロットがBの方が大きいから値段を安く売れるんですか?」
偉い人「それもある。けど、Bの方は賞味期限切れのものをかき集めて安く仕入れているから、安く売れるんだ」
中の人「あー、確かにアイスクリームじゃすぐに食べますからね。賞味期限が迫っていても特に問題ないですね」
偉い人「そう、そこにBは目をつけたんだよ。で、この場合AとB、どっちの方が正しいと思う?」
中の人「どんな意味で【正しい】んですか?商道徳としてですか?顧客の視点からですか?商売としてですか?」
偉い人「そこは【地域】と言う観点から見てで。」
中の人「う〜ん、そうなっても答えって無いんじゃないんですか?何を目指すかって言う企業の行動を選ぶのは住人ですからね。」

4月末に「高速バス」の痛ましい事故があったのは記憶に新しい限りです。
その後で様々な議論がありました。「制度が悪い」「旅行会社が悪い」「仲介会社が悪い」「ツアーバスが悪い」「運転士が悪い」「運行会社が悪い」と言った犯人探しをするような議論もあれば、「こんな事故があるのだから、路線バスの方が安心だね」とか、挙句の果てには「モンスター消費者が悪い」とか、「LCCとツアーバス」と言う「どうしてこうなった?」的な議論まで。

そんな議論と言えない書き込みが流れるtwitterのTLを横目にしながら、ここのBlogでは一切取り上げて来ませんでした。その理由は簡単です。

「制度論をマニアレベルで語ってどうなるの?」

と言うものでした。ええ、だからこそいままでの間でそんな話は一切してないですし、挙句の果てには「青屋根ktkr!!」って言うような事をやってました。と言うか、マニアとしてはそっちの方が余程じゃないですが健全だと思うんですよ。ボカロ界隈のようにCGMの仕組みが成り立っている業界じゃありませんし、それだったらマニアとして自分の趣味対象と言うかコア・コンピタンスを充実させた方が楽しいだろ、って言う判断でした。

そんな中で、そろそろ自分なりに考えたことを書いておいてもいいかな、と言うことで、今回の事故で思った事を書いておきます。

■お客さんから見れば「路線」も「ツアー」も分からない。
 「路線」とか「ツアー」にこだわるのは正直マニアだけかと思うんです。お客さんから見れば「高速道路を走るバス」と言う意味で「高速バス」になるのは必然の流れでしょう。Aと言うところからBと言うところまで運んでくれると言う「輸送」と言う本質的な部分では「路線」も「ツアー」も変わりませんし、ネットで買うのにしても、「路線」なのか「ツアー」なのかは正直変わりませんよね。

■路線バスだって違反をするし事故もする。
 「路線バスの方が安心」と言ってる人も居ましたが・・・本当にそうなのでしょうか?JR東海バスだってJRバス関東だって、バスどころか自動車を運転する人間としてやってはならない「飲酒運転」を営業便でやった事はありますよね。中央ライナー東海道昼特急大阪号で。さらに言えば、青春メガドリーム号で2度も炎上を起こしましたよね、西日本JRバスが大津、JRバス関東が牧之原で。さらに言えば、貰い事故を絶対しないとはいえません。

■「制度」が悪いのか?
 確かに「制度設計」そのものは正直言って精緻にできているものとは思えません。ですが、「ツアーバス」と「路線バス」、この関係は東海道新幹線の「ぷらっとこだま」と「特急券+乗車券」と言うものの関係と同じです。「ぷらっとこだま」はJR東海ツアーズが東海道新幹線を使って造成した旅行商品であり、契約そのものは「旅行者とJR東海ツアーズ」の間のものであり、JR東海とは直接契約を締結していません。「特急券+乗車券」で乗った場合に初めてJR東海との輸送契約を締結する事になります。
 「ツアーバス」が「違法」と言うのであれば、「ぷらっとこだま」も違法になりますし、それ以前に「旅行業」と言う業種そのものが「違法」になる、と言うことになるのではないかと。

 こんな位かなと。別に特に誰かの意見に対して食いつこうと言う事は全く思ってないですし、自分がTLを眺めていて思った事を書いたまでの話です。ただ、国交省このページにあった法令違反の内容を見ると、「こりゃ酷い」としか言いようが無いのは実際のところです。

 その上で、更に思った事を書いておきましょう。

■従業員を守れない会社がお客様を守れるわけがない。
 よく「お客様は神様です」なんて言うような事を勘違いしているお客さんがいて、実際に自分もこの時に見かけた事を書いていますが。百歩譲ってお客さん(いや、この場合は客でも何でもないクレーマーなのですが)は仕方ないかもしれません。ですが、問題になってくるのは企業の管理者の態度かと。明らかに対応した側のミスとかであれば仕方ない部分はありますが、ある一定のラインを超えたら「これ以上お前言ってみろ、客でもなんでも無いぞ」と正面切って言えるだけの度量を持っているでしょうか?一人のクレーマーのおかげで迷惑を被っているお客様も居るわけですから、当然ながらその「他のお客様」を守ることも同時に必要なはずです。その毅然とした態度が「信頼感」を与えてくれると言うのはあるはずです。
 すこし、話が変わりますが・・・以前とあるバス路線に乗った時の話です。
 首都高で交通規制&渋滞と言うコンボに遭遇し、足柄SA到着が所定より2時間近く遅れた時がありました。恐らく、中には「遅れたのは関係ない、お客様第一だったら休憩なしで行くか、全額払い戻せ」と言いだしかねないクレーマーも居るのですが、その時のドライバーさんは「安全運行のため、足柄SAで30分休憩を取るよう指示がありました。お急ぎの所申し訳ございませんが、安全運行のためにご理解をお願いします」と断って30分休憩を取ったこともありました。やはり、これは「何よりも【安全】と言う価値を大事にする」(法律での縛りもありますが)と言う所もあるのかもしれません。
 業種を問わず、どんな企業であっても「価値の源泉」は「現場で動いているスタッフ」であるのは間違いありません。この「現場のスタッフ」を尊重し、気持よく仕事をしてもらう事こど、経営層の行うべきことであると考えています。

■お客様、って言ってもどんなお客様なの?
 お客様から見て「ツアー」だの「路線」だの、と言う事は正直もう関係ない時代になってしまった、と言うのを認識すべきであると考えます。路線だろうがツアーだろうが、「輸送」と言うサービスを提供している以上、法的には色々あるとは言えども、お客様から見れば「どっちも変わらない」のは確かです。
 そうなってくると、お客様に対して「何を自分たちは提供していくのか?」と言うことを明確にする必要があると考えます。予約の利便性とか商品の使いやすさとか色々とありますが・・・そんなもんは「戦術」の話です。車両の椅子の話だって正直ある意味では「どうでもいい話」ですし、そんな「どうでもいい話」にこだわるのは正直言ってマニアしか居ないです(自分はマニアですからこだわりますが)。
 どんなお客さんが市場に居るのか、そのお客さんはどんなライフスタイルを持っていて、何を大事にしているのか、そんな中でどんな時に出かけるのか、その出かける目的は何か?と言う「お客さんの特性」を把握すること、これが最も重要なことであると思うのです。結局は他の業種と何も変わらないって言うところでしょうか、ええ。そのお客さんの姿を描いて個々の戦術を立案する、っていうのが実際に取るべき方向なのかなぁと思うのですが。

■なんだかんだ言っても
 結局は「個々の商品」をどう考えるのか、って言う話ではなく、「企業」として何を目指していくのかって言う部分じゃないのかなぁと思うところなんです。そりゃ最低限のライン(「安全性」と言うものですが)を担保しなくちゃならないのですが、その上で色んなモノの見方があってもいいと思いますから。
 ただ、気にしなくてはならないのは「お客様は誰か」と言うブランディング。その部分と最低限のラインを担保すること、これが求められているのではないでしょうか。