静岡の高速バス倉庫 アーカイブ

過去記事のアーカイブになっています。

夏色キセキ feat.伊豆急行&下田商工会議所

 今日は熱海と伊東に用務で出かけていたのですが、帰りに伊東駅から乗った伊東線の電車が

 

 これでした。尤も、写真を撮っている段階で「狙っているだろ?」と言われても仕方ないのですが、ええ、狙って乗りましたし、狙ってカメラ出していました。おまけに熱海駅では

 
  

 こんな写真も撮っていたのですが、ええ、どう見てもただの痛い鉄ヲタです。本当にありがとうございました。
 と、これで終わらないのはこのBlogの嫌らしいところです。暫く前からこのBlogを読んでいる方であれば。
 「何で伊豆急でアニメのラッピング電車走ってるの?」と言う方も恐らく居らっしゃると思いますので、事前にこちらのウェブページを読んで頂ければとおもいます。

伊豆急行 伊豆急「オモシロ駅長」情報!
夏色キセキ 作品公式ウェブページ 
■下田商工会議所 トップページ
伊豆急行 夏色キセキ駅長|伊豆急「オモシロ駅長」情報!
■夏色観光協会 下田運営本部 facebookページ

 流れとしては、伊豆急行が昨年開業50周年と言うことで様々なキャンペーンを実施していて、その中で「伊豆を愛し、伊豆を再び元気にすることに情熱を持って行動する方々と、伊豆急東急電鉄が共に力を合わせて伊豆をPRしていく、夢いっぱいのプロジェクト」として「オモシロ駅長」と言うものを公募していました。
 そんな中で、下田市を舞台としたアニメ作品「夏色キセキ」と言う作品が制作される事になり、昨今の「コンテンツツーリズム」*1の伸展を活用し、伊豆急行が「オモシロ駅長」の一員として、下田商工会議所が「地域資源の活用」の一環として下田への誘客に活用して行こう、と言う流れであると認識しています(認識に誤りがあったらご指摘頂ければ幸いかと思います)。

 そんな中で、伊豆急行がその集客の一貫及び下田市への誘客として走らせているラッピング装飾された電車が今日撮影してきた車両になっています。ちなみに内装は「アルファリゾート21」そのままでした。

 今日乗車した区間はJR伊東線内の伊東→熱海間だけでしたので、下田とは何も関係なかった訳なのですが、再来週には同じ目的の用務で下田まで行く事になっています。その際に現地の様子に関してはレポート的なものを書かせて頂こうと思っていますが、今日、こんなエントリを書いたと言うのは「下田でなぜこのような取り組みをしているのか?」と言うような仮説まがいなものを考えておきたいと言うところです。

 まず、下田市の位置的なものを見ると、御存知の通り伊豆半島東海岸では最も南側にある市であり、その事業所の構成に関しては、平成22年度の下田市統計書によれば、平成18年度現在で事業所数総数が2,420ある中で、製造業が55事業所(2.27%)、建設業が214事業所(8.8%)、卸・小売業が625事業所(25.8%)、サービス業が1,269事業所(52.4%)と言うように、卸・小売業やサービス業が盛んな都市であると見ることができます。(実際には商業統計等を見る必要がありますが、ここではこのレベルとしておきます)。
 その中でサービス業の中で多くを占めると思われる観光業、特に宿泊人員数のデータを見ますと、平成19年度が1,194,808人の実績に対し、平成21年度は866,118人と27.5%の減少を示しています。その一方で伊豆急下田駅の乗降客数を見ると、平成19年度が1,233,177人に対して平成21年度は1,244,248人と微増(0.9%増)となっており、鉄道利用者はおおまかに見て横ばい傾向であるものの、宿泊客数が減少しており、旅行形態の変化と言うものが見えるものではないかと思います(実際には詳細な統計データに当たる必要がありますが、ここではこの程度で勘弁して下さい)。
 確かに鉄道での来訪客は多くなっていますが、宿泊客数の減少と言うのはこのような都市においては大きな問題になってきます。それは商業に与える影響です。ホテルでは当然宿泊だけではなく夕食や朝食の提供と言うものも出てくるのですが、この中でホテルに納入する地元の商業者との繋がりが出てきます。それこそ普通に生鮮三品(八百屋・肉屋・魚屋)やパン屋など色々とあるのですが、やはりこの卸売業・小売業の年間商品販売額も減少傾向にあり(こちらを参考にしてください)、このままでは産業全体どころか地域全体が凋落することになってしまうと言うものが予測できます。実際に下田市の例ではありませんが、同じ伊豆半島伊東市ではホテルの経営主体の変更(地元資本経営から全国資本経営)などが多くあったほか、廃業も多くなってしまったため、これらホテルに納入をする地元商店が倒産と言うようなケースもあり、来訪客の減少と言うのは「地域経済どころか地域社会にとって死活問題」になってくることになります。
 また、昨年発生した東日本大震災の影響で、伊豆東海岸にある各観光地とも非常に大きなダメージを受けました。実際に伊東線伊豆急行線へ東京から直通運転をしている特急「踊り子」号は暫くの間運休となり、観光客が来にくいと言う状況になってしまいましたし、やはり繰り返しテレビで放映された大津波の映像が心理的に与える影響は大きなものがあったと思います。なお、震災から1年を経過し、静岡県全体で見た場合にはだいぶ元に戻ってきたと言う話も聞いています。

 そのような中で、各地方都市が「観光地としての都市間競争」に対応するため「地域資源」を活用して様々な施策を官民一体となって展開している状況になっています。その中で、下田は商工会議所が主体となって「夏色キセキ」と言う作品を軸にして来訪客の増加を図ると言う展開を行なっていると言うように「外野からは」見ることができます。*2

 と言うわけで、サクッとその背後にあるものを眺めてみると、以下のような課題を抱えていると思われます。

1 伊豆急行「お客さんが一時期より来なくなって結構厳しい」
2 下田市「宿泊客数も減少し、このままじゃたち行かなくなってしまう」
3 下田市の各事業所「このままじゃ商売たち行かないわ」

 そんな中で、「きっかけは何でもいいから伊豆、下田に来て欲しい」と言う誘客戦略の一環の中で「コンテンツツーリズム」に着目したと言うのが実際のところなのではないでしょうか。その対象として、いわゆる「オタク消費者」がターゲットになったと言う半ば【自虐】的な言い方をしてしまいますが、それも正直な話アリなのかなと思います。
 
 本来ならば何らかの統計データでエビデンスを提示できればいいのですが、あくまでもBlogレベルなので自分の経験の話から書いてみることにします(まさに「オタク」なので)。
 基本的に「自分のこだわりのあるものに関してはお金をケチらない」と言う傾向は確実にあります。本当に欲しい本があれば「戦場」とも言えるコミケにも買い物に行くどころか、「欲しい本無いなぁ」と思えば自分で作ってしまいますし、「高速路線バスの新しい路線が開業する」なんて言えば、用事もないのに会社を休んでまでも乗りに行きます(苦笑)。そう言う面から言えば「顧客ロイヤルティ」は比較的高い傾向を持つ集団なのかな?と言うように思うところはあります。だって、ミクさん関係のねんどろいどはさすがに札幌までは行けませんが幕張までわざわざ買いに行きますし(え。
 ですが、その反面として「コンテンツ=消費財」的な発想も見ることができるのではないかと思います。例えば、発売前にそのシュールさで某動画サイトで異様に流行った作品が、実際に発売されるとそんなに売れ行きが行かなかったと言うようなことも現実的にはあります。そのような観点から見れば「今流行っているものが【将来のコモンセンス】となる」ことは確実に言えないわけですので、冷静に見れば「そんな移ろい易いものに力を入れて大丈夫なの?」と言うような危惧感があると言うのは否定できません。それ故に「消費財」的な側面を持つと考えています。
 また、これは浜松市内のケースで見られたことなのですが、作品中に個人の居宅が登場した事による問題点が発生したと言うこともあり、「訪問を自粛して欲しい」と言うような流れもありました。その一方で、地方に拠点を置いて活動しているスタジオもあり、"true tears"と言う作品のTV放送の前に南砺市(富山県)や商工会などが本編画像と実写画像を使用したコマーシャルを放映したこともありました(動画はこちら。要ニコニコ動画アカウント)

機会があればお伺いしてみたいなぁ、なんて思っているのは以下の点です(実際には無理でしょうけど)。

1 なぜ「夏色キセキ」と言う作品を取り上げようと考えたのか?
2 取り上げる際に、地域住民や事業者との軋轢はあったのか?
3 具体的な取り組み策はどのように立案していったのか?
4 実際に施策を実施する際にどのような課題があり、どのように解決したのか?
5 行政機関(市・県)の支援はあったのか?
6 放送終了後の取り組みをどう考えているのか?
7 下田の「リピーター」づくりを今後どのように行なっていくのか?

まだ実際に「成果」は出切ってないとは思うのですが、静岡県内ではそう滅多にない取り組みだけに色々と参考にできるものって実はあるのかぁ、って思うところです。

*1:地域に「コンテンツを通じて醸成された地域固有のイメージ」としての「物語性」「テーマ性」を付加し、その物語性を観光資源として活用すること - 「コンテンツツーリズム学会」の定義による

*2:実際の「地域資源」と言うものの法的な定義では色々と小難しい話があるので、詳しく見てみたいと言う方はこちらをご覧いただくのがいいかと思います。個人的にはこんな「小うるさい定義」をするのは機動性に欠けると思います。