静岡の高速バス倉庫 アーカイブ

過去記事のアーカイブになっています。

7/22 広福ライナー2号/博多BT→広島BC

真っ赤な高速乗合バスに以前は大阪駅から乗ることができた。
しかし、そのバスはもう大阪駅へ顔を出すことはなくなった。その真っ赤な高速乗合バスに確実に乗る、と言うことを考えると、この路線に乗るしかなかった。

「広福(こうふく)ライナー」。

広島バスセンター博多バスターミナルの間を運行する高速乗合バスである。時刻表を見る限り、途中の休憩場所は1箇所であり、なおかつ、JR九州バスであるとは言えども、車両の座席は本州側運行事業者と合わせた仕様である4列レギュラーシート。それこそ昼間の便であれば、かつて運行されていた「山陽道昼特急博多号」と全く同じ経路。正直言えば「乗ったところで・・・」と思う部分もあったが、今回の乗りバスの行程を考えた時に、妙に気になって仕方なかった。そう、「車両はなんであれ乗ってみたい路線」と言うところである。

もともと、今回の夏の旅行は九州まで行く事ははじめは考えていなかった。広島行の夜行に乗って、広島・宮島・呉をブラブラして帰ってこようと思っていたのだが、この「広福ライナー」と言う路線が急に気になってしまい、結局は「はかた号」のプレミアムシートまで取ったと言うのが実際のところである。
夜行バスも楽しいが、それ以上に昼間の高速道路からの景色を眺めたいと言うのが実際のところ。更に言えば、山陽自動車道は「山陽道昼特急博多号」では2回下り線を走ったが、まだ上り線は走っていない。それならば「広福ライナー」を軸にして行程を考える、と言う事になったのである。


より大きな地図で 広福ライナー 博多駅→広島駅 を表示


***
博多駅、午前7時過ぎ。
前日飲んだ酒も少し残り、「このまま新幹線で一気に広島まで行ってしまおうかなぁ」と言うことも頭の中に考えていた。しかし、新幹線で行ってしまうと更に追加で約9,000円もかかってしまうことになり、せっかく確保した「早売乗車券」(2,000円)も無駄になってしまう。そんな事を考えてはいたが、やはり駅に着くとそんな事はどこかに飛んでしまう。
会社と自宅へのおみやげを買い込み、バスターミナルに向かうと汗が流れて仕方ない。節電の影響であろうか、バスを待っている他のお客さんも汗を拭っていた。福岡在住の友人は「広福ライナーが満席になっているって見たことないんだけど」と言うことを言っていたが、事前に予約状況を確認していたら残席が1席となっている。何でなんだろう?と思っていたが、その理由はすぐに分かった。

お客さんは若い女性ばかり。手元を見ると「Hey! Say! JUMP」と書かれているトートバックを持っている人もいる。「福岡でライブでもあったその帰りなのか?」と思ったが、実際に公演スケジュールを見てみるとこの乗車した7/22(日)は広島でライブがあったようで、そのライブ目当てのお客さんで満席に近くなっていたわけである。確かに広島まで通常席で片道4,000円で行けるこの「広福ライナー」はリーズナブルな交通機関であり、お客さんも多かったわけである。筆者自身もミクさんのライブを東京まで聴きに行ったりしておりますので、どうこう言うことはないし、高速路線バスを使うって言うのは選択肢の一つだね、なんていうように思う。
しかし、ライブのグッズ販売は8時からなのだが大丈夫なのであろうか・・・。

バスは10分前に乗り場に入線してきた。この博多バスターミナルはガラスで区切られているため残念ながら乗車前の撮影はできない。早速荷物を預けて車内に乗り込む。

JR九州バスだからと言って独特の内装ではないごく普通の西工車であり、椅子も4列レギュラーシート。これで4時間隣にお客さんがいるって言うのはキツイなぁと思っているところで隣席にお客さんがやってきた。その後、出発まで乗ってきたお客さんは殆どが女性ばかりであり、男性はドライバー氏ともう2,3人程度しかいない。完全に「広福ライナー(レディースシート)」的な展開となってしまった。
ところが、である。出発前にドライバー氏が人数確認をしに来たのだが、自分の座っている席の当たりに来たところでに手元の座席表を確認し、こんな事をその隣席の女性に切り出した。

「お隣のお客様のお連れ様じゃないですね。一番前の席が空いておりますので、そちらの方へどうぞ」

・・・いや、正直オレが行きたいんですが、と言い出しそうになったが、そこは我慢。少なくとも小倉南インターまでは隣席に誰も来ないと言うことが確定しただけでもありがたい話。と言う事で確認を終えて博多バスターミナルを出発する。

 

この「広福ライナー」は天神を経由せずにそのまま都市高速の呉服橋ランプから一路広島を目指す。結局福岡滞在は24時間も無いと言う非常に短い時間であった。まだまだ見に行きたいところは色々とあったが、それはそれでまた次回の課題と言うことにしたい。

 

左手には博多港、右手には貨物ターミナルと言う湾岸部の景色の中を進んでいく。写真は撮ってはないが、都市高速を走る西鉄の一般路線バスの姿も見ることができる東京とは違うまた活気のある光景。やはり時には「東京」ではなく、他の都市も見る必要があると思うし、それぞれの街をよく見たいし歩きたい、と言うのが自分の中で更に大きくなってくる。今回は残念ながら時間の関係でロクに歩くことはできなかったが。

そして、バスは福岡インターチェンジから九州自動車道に入り、昨日来た道を一路東へと向かって進んでいく。どのバスに乗ってもそうであるが、「朝の車内の風景」と言うのは見ていて本当に気持ちいいものである。眩い太陽と車内の「これから別のところに行くんだ」と言う高揚感、そして自分も「これからまた別のところに行く」と言う気持ち、それもあるのかもしれない。ましてや車内のお客さんはこれからライブを聴きに行く訳で、そのテンションの上がり方もまた違うのかもしれない。

そして、小倉南インターに停車。同じく広島のライブを聴きに行くと思わしきお客さんで車内はほぼ満席に。しかし、自分の隣席には誰も来なかった、要するに飛び込み乗車の男性は居なかったと言うことになる。これで隣席は空席と言うことが確定となり、4列レギュラーシート車ではあるものの、比較的楽な行程となることが確定した。

バスは九州の地に別れを告げ、本州へと足を進める関門橋。昨日はこの橋を渡って九州へ上陸し、今日はこの橋を渡って本州へ帰っていく。そんな事をバスの中で考えているのは自分だけかもしれない。車内のお客さんはそんな「海峡」と言うものを簡単に乗り越えて福岡と広島を行き来しているのかもしれない。高速乗合バスには乗り慣れていても「非日常」である自分と、「日常に限りなく近い非日常」である他のお客さん、そこには大きな違いがあるのかもしれない。

下関を抜けて、バスは右に左にカーブが続く中国自動車道を東へと走っていく。この中国自動車道を「これってバスでDじゃん」と言った人も居るが、新東名の緩いカーブと比べると「本当にこれで同じ高速道路なの?」とやはり思ってしまう。作られた時期も違うし、その歴史背景を見た場合にはある意味仕方ない部分もあるが、上に掲出した地図を見ると本当に細かいカーブが多いし、勾配もキツイ。そんな中を着実に運転しているドライバーさんはやはりすごいものだと再認識。

そして、博多を出てから約2時間で休憩場所の美東サービスエリアに到着する。ここで10分休憩。

特にここのサービスエリアで飲み食いをする訳でもないので、何はともあれ写真撮影。
形だけ見れば普通の「西工車」ではあるが、やはり塗装が違うと全く違った印象を受ける。以前に乗った「山陽道昼特急博多号」の圧倒的な存在感もあるが、この「赤一色」と言うのは本当に目立つ。時々東名沿線で写真を撮っていると貸切車がひょっこり静岡県内を通ったりもしているが、「見慣れない」と言うこともあるのか、やはり「他のバスとは違う」と言った印象を受ける(実際に乗ってしまえば同じではあるが)。後、これはただ単に目の錯覚かもしれないが、少し窓の天地方向が広いのかな?と言う印象も受けたわけで。実際に見比べてないのでなんとも言えないう部分ではあるが。

写真を撮って、一服をしている間に10分は過ぎ去ってしまい、再びバスに乗り込んで広島へと足を再び進める。

 

中国道に一旦別れを告げて、山陽道に進路を変える。山口ジャンクションは中国道が直進・山陽道が分岐と言う構造となっており、中国道山陽道の歴史的立場が見えてくるところではあるが、実際の通行量は断然に山陽道の方が多くなっている。そして、山陽道の中でも自分が一番好きな景色である防府付近を通過する。ダブルデッカー車の最前部から見る光景に慣れきっていたのだが、実際に普通の高速乗合バスの視点から見ると、またなんとも言えない光景である。このような光景を「いいなぁ」と思うのは、やはり地元では見る事のできないものだからであろうか。

山陽道もここの付近は比較的低いところを通過していくが、やはり海岸線沿いには住宅が多くあり、新しい道路を引くことができないためか、道路は再び山の中を進むことになる。中国道よりはカーブは少ないが。その山中を抜けると進行方向右手には瀬戸内海の風景が広がる。

瀬戸内海に浮かぶ宮島。既にバスは広島県内に入っており、もう少しでこの山陽自動車道とも一旦お別れになる。徐々に住宅も増えてくる中、道路は一旦山間部の方に入ってから広島インターで一般道に入る。

中筋駅では青春昼特急広島号とタッチの差ですれ違う。この青春昼特急広島号に乗ることができれば、大阪駅約1時間待ちで京阪神昼特急静岡号に乗り継ぎができるのであるが、さすがにそこまでして禁欲的にバスに乗りたくないところ。そんな訳でハナから広島バスセンターまで向かう。途中の不動院前付近では近距離高速線の車両とすれちがい、確かに広島に来ているのだなと実感する。

 

そして、広島市の中心部に歩みを進め、左手には広島城を眺める頃、バスは終着駅の広島バスセンターに到着する。博多バスターミナルから約4時間の旅はここで終わる。

***
今回、はじめてこの「広福ライナー」に乗車したわけですが、広島と福岡の「遠いようで近い距離」と言うのを実感することができました。てっきり、自分当たりですと「東京静岡間くらいの距離なのかな?」と実は思っていましたが、新幹線で行けば約9,000円、と言うことの意味するものを考えると、確かに「全く異なる文化圏にある」と言うことを体感することができました。
実際、以前は西鉄もこの区間に昼行便を運行していましたが、現在では運行を取りやめています。おそらく、「福岡との繋がりが九州島内ほど強くなかった」って言うのもあるのかもしれません。また、乗ったバスは色々とあって満席でしたが、実際には「そんなにお客さん乗ってないよ」と言うこともあり、繋がりはあるようで無い、かと言って、全くない無いと言う微妙な条件なのかもしれません。

個人的には、以前「山陽道昼特急博多号」で運行をしていたダブルデッカー車、山口ではなくてこちらの広島便で走らせてもいいのではないのかな?と思うところもありますが。