静岡の高速バス倉庫 アーカイブ

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7/22 山陽道昼特急広島6号/広島駅新幹線口→JR大阪駅BT

広島駅新幹線口。
大学生の頃には車内販売のアルバイトで広島行の泊り行路があり、好きで結構その行路に入っていた。そんな時にこの広島駅新幹線口はよく通った。その頃からロータリーには様々なバスが停車していたが、その光景はあの頃と変わらない、そんな事を考えながら大阪行のバスを待っていた。

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山陽道昼特急広島号。
以前走っていた「山陽道昼特急博多号」の姉妹とも言える系統であり、こちらは広島と大阪を結ぶ系統である。車両も「昼特急」の名前にふさわしくダブルデッカー車を使用しており、フロントウィンドウから眺める山陽道の景色を楽しみにバスが入ってくるのを待っていた。

そんな時、ロータリーに入ってくる中国JRバスのスーパーハイデッカー車。そういえば地元静岡じゃスーパーハイデッカー車って滅多に見ないよなぁ、などとそのバスを眺めていたが、山陽道昼特急広島6号となるダブルデッカー車はまだ来ない。すると、そのバスはスルスルと動き出し、バスのりばに入線する。

「おまたせしました、山陽道昼特急広島6号大阪駅・湊町バスターミナル行です」との案内放送。え?それって??と思ったのは当然である。その後、「本日、都合により車両を変更して運行いたします」との案内。一体何があったのか?と思いながら荷物をトランクに預け、乗車券の改札を受ける。

「今日は何かあったんですか?」
「申し訳ありません、冷房の故障で車両変更させて頂きました」

・・・冷房故障じゃ仕方ない。だが、考えてみれば「スーパーハイデッカー車」はなかなか静岡民には乗るチャンスの無い車両である。ましてや、それが中国JRバスの車両であれば。後で社番を検索してみたところ各系統の「共通予備車」との事であり、狙って乗ることが出来ない車両と言う事であった。更に言えば、JR東海駅構内に入るためのオレンジ色のJRマークの入ったプレートも付いており、名古屋駅行「セレナーデ」号にも運用可能な車両となっている。

実は「乗りバス」をしていながらも、中国JRバスの車両に乗るのは初めてである。岡山や広島は飛行機で通りすぎてしまうか、今までであれば「山陽道昼特急博多号」で通りすぎてしまうだけであり、大阪から先に行く機会が殆ど無い自分にしてみればJRバスグループの各社の中でも乗るチャンスどころか見かけるチャンスは少ない(それでも、清水IC付近で撮影をしていると見かける頻度は多い)。そう考えるとある意味幸運でもあったわけである。
この中国JRバスの特徴は何よりもその座席。他の会社ならばモケット地のものであるが、写真を見ていただくと分かる通り「革張り」の座席になっている。革張りの座席、と言えばJR九州885系「白いかもめ」が有名ではあるが、高速乗合バスで見かけるのは自分の知るかぎりではこの会社しか無い。この「革張り座席の高速乗合バス」の乗り心地も期せずして楽しめることが出来ると言うのは、絶好の機会である、とスイッチを即座に切り替えて楽しむことにした。

バスは広島駅新幹線口を出ると、「広福ライナー」の終点である広島バスセンターにまずは向かう。どこを走るのかと気になっていたわけだが、メインストリートと思わしき広電の通っている道路ではなく、「城南通り」と言う広島城に近い通りを走っていく。そして、スロープを登りバスセンターへ。

遠くには今しがた乗った路面電車が走る道路と原爆ドームを眺めることができる。今回の広島滞在は僅か数時間ほど。その中でかろうじて食事をして、路面電車乗って、まちを歩いてと言うことで余りにもせわしなかった。今度は時間をゆっくり取ってじっくりとウロウロしてみたく思う。いや、ここで1泊しても良かったのだが、さすがに体力を考えると今回はあきらめざるを得なかったのが実際の話しだったりする。

やはりバスセンターでも「今日は代わりの車両なんです、すみません」と言うようなやりとりが聞こえてくるだけあって、この「山陽道昼特急広島号」にはダブルデッカー車がすっかり定着しているのかもしれない。そして、反対側に目をやれば中距離高速便の車両が入ってくる。どこから来たバスなのか、どこへ行くバスなのかは分からないが、今度は広島で山陰方面へも行ってみたいと思いながら。
バスセンターを出発し、「広福ライナー」で来た道をそのまま広島インターへと戻る。車窓にはなかなかじっくり見る事の出来なかった広島城や、普段着のまちの姿を眺めることができる。やはりこんな部分を楽しめるのは「バス旅」の魅力なのかもしれない。
今回思ったのは「随分と奥まで市街地があるんだなぁ」と言う事であろうか。だからこそ、アストラムラインが走っているわけだし、九州方面や大阪方面へと向かう高速乗合バスが不動院前BSや中筋駅BSにも停車してお客さんをこまめに拾っている理由なのかもしれない。しかしながら、この日に乗った便は不動院前からの乗車はなく、中筋駅からは数人程度。やはり時間帯的に中途半端な便なのかもしれない。

そして、再び山陽道に戻り、今度は大阪方面へと歩みを進める。

バスは上り勾配を気にせず、快調に走っていく。山陽道は正直なところを言えば山の中を多く通っており、よくも悪くも最近の「高速道路」。せっかくののんびりできる時間なので出発前にiPadに詰め込んだ音楽を聴きながら過ごす。この「何もしない時間」を取ることができるのが個人的には長距離の路線バス旅の良さだと思っている。ふと車窓に目をやれば東広島呉自動車道のまた新しい道路がその姿を見せていたりとか、広島空港行のリムジンバスを軽く追い抜いていくと言う光景を目にすることができた。

そんなこんなでくつろいでいると、早速1回目の休憩である八幡PA着。「え?もう到着なの?」と言う位の距離。

お約束の写真撮影。そう言えばここまですっきりとしているバスの姿ってそんなに最近見てないなぁと思う。少し控えめに書かれている「CHUGOKU JR BUS」の赤文字、そして、大きなつばめマークと青と白のツートンカラー。デザイン的にはそれこそ20年以上の前のものではあるものの、今でもその当時の新鮮さが失われていないのはそれだけこのデザインが「時間に耐えることのできる」ものではないかと思う。ちなみに、つばめの下にある黒い四角の部分、ここはどうやら交代乗務員さんの休憩場所とのこと。さすがに昼行便では使う事は無いものの、「共通予備車」と言う役目である以上必要な設備なのかもしれない。

10分の休憩の後、再びバスは大阪を目指して走り始める。峠を超えて下り道に入ってきた所、進行方向右側に視界が広がる。場所をよく確認してなかったのが多少アレではあるが、恐らく尾道のあたりではないだろうか(そう言えば尾道って言うインターの標識が出ていた)。一度は走ってみたいしまなみ海道であるが、一体いつの日に行くことができることやら。行きたい所が多すぎて困るのは相変わらずのこと。そうこうしているうちにバスは広島県から岡山県に入り、今度は倉敷付近の工場群を車窓から眺めることができる。

田園風景の中に伸びる高架は新幹線であろうか。倉敷も新幹線で何回も通ったことがあるが、まともに歩いた事はまだない。それこそ、岡山に居る同期生が今の本職の方と同じ仕事をしているようなので、一度時間を見つけて意見交換がてら飲みに行きたいと思うところ。それこそ、全国各地に居る友人知人を訪ねて歩いたらどこでも行けそうな予感(苦笑)。

と、そんな事を考えながら音楽を聴いているとあっという間に吉備サービスエリア。ここでも10分休憩。
この「山陽道昼特急広島号」は西日本JRバス中国JRバスの共同運行便であるが、西日本JRバスはワンマン運行で広島〜大阪間を運行しているが(休憩場所2箇所)、中国JRバス便はこの吉備サービスエリアで広島支店の乗務員から岡山支店の乗務員に交代する。そのため、この便は休憩も3回ある。
さすがに夏休みの日曜日と言うこともあってサービスエリアは家族連れの車が多く居たり、その他にもバイク仲間のツーリングも居たりとか、「休日のサービスエリア」的な感じが非常にしていた。そんな中で、ドライバーさんは引き継ぎ・車両点検を行なっている。当たり前のことかもしれないが、やはり安心して乗ることができる。

吉備サービスエリアを出発すると再び峠越えに入る。今度は岡山県から兵庫県に入るが、背後から迫ってきたなんば行のサザンクロス号にあっという間に追い抜かされる。あちらはなんば行きの直行便、こちらは大阪駅経由の湊町バスターミナル行。直接なんばまで行くのであればサザンクロス号を普通は使うかと。日も傾いた播州平野を走る頃、今度は白鳥PAで再び10分休憩。

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この「山陽道昼特急広島号」は、かつて運行していた「山陽道昼特急博多号」のように三宮を経由せずにそのまま大阪駅まで直行する。実を言えば、このルートも今まで乗ったことがなかった。一体どんな経路で行くのかと流石にこの区間はカメラを構えて乗っていた。この区間をじっくり見たいがために最前列を取ったのだが・・・まぁ、こう言う日もあると言うことで(苦笑)。

神戸ジャンクションを大阪方面へ向かうが、早速お約束のトンネル渋滞。東名高速でも大和トンネルを抜けると何事もなかったかのように消える渋滞もある訳なので、恐らくそれと一緒なのであろう。だが、これだけの渋滞が起きると言うのはそれだけ大都市区間に入っていると言う証左であろうか。

山口県内で一旦別れた中国道に再び合流し、カーブを右に左にしながら渋滞に揉まれつつ大阪平野へと下っていく。博多を早朝に出て、大阪に夕刻に到着すると言うのは傍から見たら「大いなる時間の無駄遣い」かもしれない。しかし、車内でのんびりと世間から離れた時間を過ごすことができるということ、そして、車窓の風景をのんびり楽しむことができるのが「バス旅の良さ」と実感できた。

中国池田で中国道に別れを告げ、阪神高速に入って梅田ランプを目指す。右手には大阪空港の夜景を眺めながら、遠くには梅田のビル街の灯も観ることができる。そして・・・5時間の長旅を終えてバスはターミナルに入った。

この大阪駅JRバスターミナルも見慣れた光景となった。ここで「山陽道昼特急広島号」の旅は終わる。
バスは、湊町バスターミナルまで向かうお客さんが居なかったのか、ドライバーさんは電話確認の後で行先表示を回送に直して車庫へと向かっていった。そして自分は、友人と合流して夕食へ。最後のバスに乗るまでの小休止である。

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大阪で食べたのは「モダン焼き」。いや、広島焼きとは「全く違う」食べ物でした。