静岡の高速バス倉庫 アーカイブ

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3/16 のぞみ329号(2)/東京→新富士


 東京駅を出発すると、いつもの案内放送が流れる。
 しかし、この日は聴きなれた「のぞみチャイム」ではなく、品川開業時に変更されたチャイムのままであった。しかし、それでも東京駅を出発するときの高揚感は抑える事はできない。東海道線電車や山手線との並走も見ることができれば、ビル群を抜けていく様子もまたたまらないものである。常日頃乗り慣れている高速バスとはまた違ったその風景、やはり「新幹線」である。
 とは言うものの、7分ほど走ってすぐに品川停車。「のぞみ」運行開始当初〜自分が乗務していた頃〜は、品川駅は図面上でしか存在しなかったし、新横浜に停車するのぞみも殆どと言っていいほどなかったのが実際のところであり、正直言えば完全に「あの頃ののぞみ号そのもの」ではない。しかしながら、「のぞみ」の運行開始、それに伴う車両性能の全般的な向上によって生み出された余裕時間を割いて「品川」「新横浜」の価値を高めると言うのは航空に対する競争手段とするのは現実的なものであると思う。乗っている方としては少し走って品川、また少し走って新横浜と言うのは落ち着かない部分ではあるが。

 新横浜を出発すると、300系新幹線の全力を思いっきり見せてくれる270km/h走行が始まる。700系やN700系のように軽々と加速する・・・と言うものではないが、それでも「全力で走っているんだ」と言う事を感じさせてくれる加速はやはり魅力的ではある。
 そんな時に車掌さんからの「300系新幹線の紹介」の案内放送が車内に流れる。0系東海道新幹線最終列車の時には三河安城駅出発後にあったので多少違和感を感じたものの、300系車両が新幹線にもたらした影響と最後の300系新幹線での旅を楽しんで欲しいと言う案内放送は、否応なく「本当に最後の運行に乗っているんだ」と言うことを感じさせてくれるものであった。

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 沿線にはこの300系の最終運行を見届けようとする多くの人の姿があった。
 考えられうる様々な場所で砲列に迎えられるだけではなく、ただ手を振りにでてきている人の姿も見ることができた。最後の300系、と言うのもあるかもしれないが、それだけ生活の中に「新幹線」が既に根付いており、切っても切り離せない〜いわば、それなしでは今が成立し得ない〜と言う状況になっているのでは無いだろうか。新幹線開業から40年以上経過し、自分も「新幹線が当たり前にある時代」を生きてきた年齢である。そんな中で「300系を見送りたい」と思うキモチがファン以外にもあって然るべきなのかなと言うように思うところである。


 列車は静岡県に入り、車窓には富士山を望むことが出来るようになった。車掌さんからも富士山の案内放送が入り、ほぼ同時に検札が回ってきた。本当に「当たり前のようにそこにある」風景である。EX-ICカードのサービスが開始されても全く変わらない。そう、いくら「300系最終運行」と言っても、そこにあるのは「普段」なのである。