静岡の高速バス倉庫 アーカイブ

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3/16 さくら561号(終章)/「キノウ」が「ミライ」に届く時。

 「ミライ」が「キノウ」になる事を見届けた後、20番線に向かった。そう、300系と言う「キノウ」が重ねた「ミライ」のさわりだけでも見るためである。

 九州新幹線直通用N700系「さくら」号である。

 300系の直系の子孫ではないものの、300系が重ねてきた「キノウ」の上に広がった「ミライ」を見たい、そう思って矢も盾もたまらずに姫路までの指定席券を購入して乗車した。確かに同じ新幹線ではあるが、「さくら 鹿児島中央」と言う文字や、車内の2-2列指定席と言った東海道新幹線では絶対に見る事ができない車両である。

 さくら561号は13:59に新大阪駅20番線を滑り出し、一路鹿児島中央へと走りだす。
 姫路までわずか30分と言う中で指定席に乗るのは正直どうかと思う部分はあるが、大阪以遠に行く事が殆ど無い自分にとっては絶好の機会である。しかしながら、どことなく落ち着かないのは一体何であろうか。乗りなれない区間と言うのもあるかもしれないし、今まで自分が殆ど経験した事のない「新幹線」の車内だからであるかもしれない(実際、「ひかりレールスター」でさえ、博多→新大阪で1回しか乗ったことがない)。

 だけど、その違和感の理由はすぐに分かった。
 東海道新幹線が見せてくれている「ミライ」ではないからである。確かにN700系そのものは何度となく乗っては居るものの、白いボディーに青いラインを纏った16両編成のそれである。しかし、このN700系は全く違う。どうやって飛行機からお客さんを奪うかを考えて創った車両であるが故である。そんな東海道新幹線の「ミライ」とは全く違う「ミライ」がそこにあるからであった。
 きっと、頭では異なった戦略が存在している事は分かっているものの、実際にその戦略が具現化しているのを見た際に感じた「違和感」なのかもしれない。


 客室入口の上にあった「JR九州」と言う文字、新幹線の中とは思えないパブリックスペース。全てが衝撃的で、全てが感覚を刺激している。姫路までの30分の間、そんな「違和感」を感じていた。


 300系はもう走らない。
 だけど、このN700系300系の思想を受け継いでいる。

 「ありがとう」と言う言葉。
 それは、300系からN700系に向けて贈られた言葉であるのかもしれない。
 そして、何事も無かったかのように、新幹線は走り続ける。

 いろんな人の色んな思いを乗せて。今日も、明日も。

(終)