静岡の高速バス倉庫 アーカイブ

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湊町BT0905→博多交通センター1842 山陽道昼特急博多1号


車輌 :744-2990号車(西日本JRバス阪高速管理所)
乗務員:湊町BT→沼田PA(広島) 西日本JRバス阪高速管理所
    沼田PA(広島)→博多交通センター JR九州バス 博多支店

 四国や近畿各方面の行き先案内が並ぶ出発案内板の中にひときわ目立つ「博多」の文字。今日もここから「山陽道昼特急博多号」に乗り込む。このターミナルに来るのは2回目。前回山陽道昼特急博多1号に乗るためであった。

■1 西への助走。(湊町BT→三宮BT)
 この日の担当便は西日本JRバス。去年は西日本JRバスの高速車にわずか1回しか乗った事が無く、JR九州バスの真っ赤な車体もいいけど、今回は西日本JRバスに当たればいいなぁ、なんて思っていた。手荷物を預け、指定された席に座ると程なく発車である。

 今回は4C席を指定されていた。所が、マルス割り当て分と思われる1ABC席には誰も来てないと言う状況。ちなみに湊町BT発車の段階ではわずか3人と言う状況だった。これだったら一時期ガセネタで流れていた京都駅発着にしてしまった方がいいんじゃないのか?などと本気で思ってしまった。阪神高速に湊町ランプから入り、一旦梅田ランプで出てから大阪駅へ。大阪駅でも乗ってきたのは10人も居ない状況。確かにそれもそのはず。新幹線で行けば10,000円がちょっと抜ける値段、かつ3時間もかからないのに行けるのだが、バスだと9時間以上。「山陽道をゆったり移動したい」と言う人が使うバス、って言う状況ではないだろうか。
 大阪駅を出ると福島ランプから阪神高速に入り、豊中名神高速に入る。西宮まで名神を走った後、再び阪神高速へと行くわけだが・・・何で阪神高速だけで行かないのか?なんて言う事をつい考えてしまう。

 六甲山の山並みと阪神間の住宅が広がって居るが、何故か新聞を車内で読んでいたりする間にバスは渋滞の関係か摩耶ランプで一般道に入り、三宮BTへと向かう。三宮では約5人ほどが乗車。そして、1033に三宮を出発し、一路博多への長い道のりが本格的に始まった。

経由地 到着 出発
湊町BT ---- 0905
大阪駅 0925 0930
三宮BT 1028 1033



■2 海から山へ、そして平原へ。(三宮BT→白鳥PA
三宮BTで乗車人員が確定する。最終的には20名にすこし足りない数字であった。確かに金曜日とは言えども平日になるわけだから仕方ないものがあるわけで。ふと、前方を見ると1C席は埋まっているものの、1AB席が空いているのでやはり移動してしまった。普段では滅多に乗る事が出来ない路線と言う事もあるので、早速移動して山陽道の眺めを堪能することにする。

まずは再び阪神高速に戻り、一路西へと向けて走り出すが・・・まだ渋滞は解消されていない状況。だが、一番「神戸らしい」風景の中を走っていく。右手には六甲山、左手には神戸港と言うそれだけでも十分「いい景色」であるが、この渋滞が後まで延々と響くとは正直思っても居なかった。その後、海岸からはずれて山間部へ入っていくがそれでも左右には家々が立ち並ぶ。だが、視線を左側に向けると

遠くに淡路海峡大橋と淡路島が一瞬だけ顔を見せる。まだこっちの方には一度も行った事がない訳で、機会を見つけて行きたいと思うところではあるが・・・まだそのチャンスは無い。そして、住宅地とも離れ幾つかのトンネルを抜けて三木ジャンクションへ。

方面表示に出てくる「岡山」と言う文字。この「岡山」と言う文字が「広島」に変わり、「北九州」に変わり、そして「福岡」と言う文字に変わっていく。ここまで来ただけで「遠くに来たなぁ・・・」と言う事を本当に感じる。そして、小高い丘と平野が続く播州平野を一路西へ西へと進む。それこそBGMはPat Methenyの"Facing West"から"Cathedral In A Suitcase"あたりが一番似合うような気がする。いや、本当にただそんな風に思っただけなんだが。

姫路城を左手に見る。その昔、新幹線の車内販売のアルバイトで大阪〜博多・大阪〜東京を行き来していた頃は良く眺めていたのだが、新幹線とは反対側から眺めるのはまた新鮮なものである。そして、バスは最初の休憩地である「白鳥PA」に到着。

風は冷たいけど、どことなく日差しが柔らかくなっているような気がした。

経由地 到着 出発
三宮BT 1028 1033
白鳥PA 1145 1200

「次のSAにはどの位停まりますか?」
「約25分くらいですよ」
よし、これならここで食事を買ってバスの中で食べるよりも、福山SAで何か食べた方がいいな。



■3 小高い丘を縫って。(白鳥PA→福山SA)
 山陽道、と言うと一体どんなイメージを持たれるだろうか。海岸沿いを走る高速道、と言うイメージを持たれる人も多いかと思うが、実際には海はそれほど見える事はない。いや、確かに東名高速のそれと比べれば確かに多い。だが、山陽新幹線を見ても分かるように、トンネルが多かったり結構急な勾配が多かったりするのが実際の所だったりする。

 白鳥PAを出てしばらく行くと、山陽新幹線が道路の上をまたぐ。山陽本線で言えば姫路と岡山の間の本数が少ない区間。確かに周囲に民家はまばらであり、確かにここを通すのが一番コスト的には安くなるのかな、と思う部分はある。それでも、バスは行き足を落とすことなくエンジンを振り絞って兵庫県岡山県境を走り抜けていく。東名高速ではなかなか味わえない走りである。そうこうしているうちに、

 岡山県カントリーサインに遭遇する。さて、このカントリーサインのモティーフはどこにあるのだろうか、地理不案内な自分にはすこし分からない所もあるが。この県境を境にして今度は岡山方は峠を下っていく事になる。トンネルに入ってはまた出て、また入りながら西へ西へ。

 そう、イメージ的にはこんな感じである。小高い丘を縫ってのびる高速道。その丘の斜面では一体何を栽培しているのだろうか。マスカット?桃?それとも一体何だろうか。確かに「どこにでもあるような風景」なのもかもしれない。だが、そんな「当たり前のような風景」の中で、確実に余所者の自分がゆったりとしながら旅行をしている。本当にそんな「ゆったりとした時間」が確実に流れている。

 車窓が開けると、そこには玉野のコンビナートであろうか。遠くに見える煙突群と小高い丘。そして、広がる春を待つ畑?田圃?そんな眺めを見ることが出来るのも高速バスの楽しみの一つなのかもしれない。玉野のコンビナートを見る事が出来れば、もう広島県はすぐそこ。

 厳島神社の鳥居と紅葉をモティーフにしたカントリーサインが見えれば広島県。ちょうどいい具合に1本目のお茶が無くなり、おなかもすいてきた。福山SAはすぐそこである。

経由地 到着 出発
白鳥PA 1145 1200
福山SA 1340 1405



■4 粉雪が舞う中を。(福山SA→沼田PA

何故か山陽道昼特急博多号に乗ると「尾道ラーメン」を食べてしまう。澄んだスープに背脂が乗っているこのラーメンはなかなか地元では食べる事が出来ない。しかし、個人的に「ラーメンセット」を頼んだのは失敗だったなぁ。これだったら普通の大盛りにすれば良かったと今更ながら後悔してみる。

 実はこの便の直後を「山陽道昼特急広島号」が走っており、白鳥PA、福山SAでもほぼ同じ時間で休憩を取っていたが、なかなかどうして写真を並べて撮る事は出来なかったorz。もっとも、バスの色は全く同じであるため誤爆もとい誤乗車を防ぐためにわざと離れて止めているんじゃないのか?と思う所もある訳で。ここで広島行が先行し、博多行はその後を走る事になる。

 再び道路は山の中をアップダウンしながら走り抜けていく。空を見ると真っ青だった空には雲が出てきており、ひょっとしたら・・・と思っていると雪が降り出してきた。すぐに溶けてしまうような雪ではあるが、雪には間違いない。北海道のような雪ではないものの、車窓から見る限りは粉雪のように見えた。確かに広島の方では雪も降ると言う話を聞いていたので、ひょっとしたらどうかなぁ・・・と思っていた。
 そんな粉雪の降る中をほんの少し走ると空はまた輝きを取り戻す。

 山陽自動車道の最高地点。随分標高が高い所を走っているのでは?と思ったが、実際には370m程度。東名高速の御殿場付近であっても470m。普段駿府ライナーやしみずライナーに乗っていると当たり前のように見える「東名高速道路最高地点」が結構高い所にあると言うのも、考えてみれば結構不思議な話である。尤も、中央道の方がよっぽど高いところを走っている訳なんだが。そんな標高の高いところから駆け下りていくと広島インターチェンジを通過。

 かなり遠くまで来たもんだ。さて、ここまで来ればあとは静岡→東京間を走るようなものかな、と思いながらトンネルを抜け、沼田SAに入る。

経由地 到着 出発
福山SA 1340 1405
沼田PA 1510 1520

■5 日本の風景。(沼田PA→美東SA)

沼田PAでは、ここまでハンドルを握ってきた西日本JRバスのドライバーさんからJR九州バスのドライバーさんへと交代する。以前乗ったときはツーマン運行であったが、やはりコスト的な問題とか乗務員の運用効率の問題もあるのだろうか、このような形での乗務に変更になっている。そして、10分程度の休憩の後で再び西へと向けて走り出す。
 個人的に「山陽道昼特急博多号」の一番景色のきれいな区間は広島から先ではないかと思ってるし、ここの区間は本当に「日本の原風景」なんじゃないのかなと思っている。

 車窓には瀬戸内の風景を望む事ができ、今回は写真を撮ってないものの山口県内に入ってからの夕暮れ、そして平野の風景。決してそこに居た訳ではないのだけど、何か「懐かしい」と思う自分が居たりする。そう、そこには何故か"鳥の詩"が似合う。何故そうなのかは分からない。だけど、確実なのは「夕焼けの風景」がそこにあるからなんじゃないのかなと思う。陽はだいぶ傾いてきた。朝の鮮やかな空の色から、どことなく黄色みを帯びた夕焼けの風景になる。

 看板に「北九州」と言う文字がついに出てきた。一体どこまで遠くへ来たのだろうか。

 瀬戸内の風景、そして、空に浮かぶ白い雲。

 そして、本州最西端の県山口県に入る。トンネルを抜け、高度を下げ、バスは夕焼けの風景を走りながら山陽道から中国道に入る。右に左にカーブを切りながら行くと最後の休憩地美東SAに到着する。

経由地 到着 出発
沼田PA 1510 1520
美東SA 1655 1805



■6 夕陽の先にある煌めきへ。(美東SA→博多交通センター)

 美東SA、最後の休憩地である。ここまで来れば後は山を下って関門橋、そして博多ももうすぐと言う所である。東名で言えばそれこそ足柄SAみたいな所になるのであろうか。西の空もすっかり黄色を帯び、すっかり夕暮れの雰囲気である。
 バスは出発すると再びカーブが続く中国道を走っていくが、途中で新幹線でもない何か不思議な高架橋の下をくぐる。

 そう、前回乗ったときには気づかなかったのだがこの道路は「宇部興産専用道路」と言う非常に珍しい道路だったのだ。それが証拠にいままさにバスの上を通過しようとする貨物車輌は2両連結と言う「滅多に見る事が出来ない」ものであった。かつては鉄道で輸送をしていたものの、専用道を造ってしまった方が楽と言う事であろうか。2回ほど出かけたJRバス関東の「白棚線」とはまた違っているアプローチであるとは思うが、話でしか聞いたことが無いものを実際に見る事が出来るのは非常に愉しいものである。
 そして、下関を抜けるといよいよ関門橋である。

 九州には何回か来たが、関門橋を通って九州入りするのは2回目。そもそも高速バスで無いとここを通る機会は無い訳だが、この橋を渡るのはやっぱりいつでも楽しみである。九州道をすこし走ると何故か雪が路肩に残っている。
 博多着後に友人と飲みながら話したのだが、北九州では不思議な事に結構雪が降るという。確かに数日前の大阪行山陽道昼特急博多2号が雪のため150分遅れと言うのもあった。だが、その一方で福岡ではそんなに雪は降らないと言う。不思議な話である。

 そして、最初の停車駅小倉南インターでお客さんを5人ほど降ろしてから、最終目的地への博多へと九州道を進む。既に日は落ちてテールライトが眩く光る。そう、高速道路を走る車の数も増え、対向車線には小倉行の西鉄高速バスがひっきりなしに走ってくる。

 福岡インターで九州道に別れを告げ、都市高速を走って行く。すっかり暗くなった空に家々の灯とナトリウム灯の明かりが眩しく見えるようになり、博多港の脇を通り抜けて行く。そして、高速道路を降りる呉服町ランプ。

 最後の最後で出口渋滞に引っかかる。そして、目の前には福岡名物と言っても差し支えはないであろう都市高速経由の一般路線バスが。これを見ると福岡に来たんだなぁ、と毎回思う。

 博多駅へファイナルアプローチ。博多駅ビルはすっかり解体されており、以前に眺めた風景とは全く異なっていた。そして、19:10頃、定刻より25分ほど遅れて博多交通センター2階にバスは滑り込んだ。
***
 大阪を朝出発し、山陽道・九州道をひたすらに走り抜ける「山陽道昼特急博多号」の旅はここでおしまい。東名・名神とは全く違った風景の中を走り抜ける「昼特急」。移動だけで丸一日終わってしまうが、その「丸一日」と言う時間をどう考えるかで、楽しめるかどうかが違ってくると思う。景色を眺めながら音楽を聴くも良し、本を読むも良し、そして寝るも良し。
 新幹線や飛行機では味わえない「ゆったりする時間」を楽しむ事ができるのではないだろうか。時にはこんなのんびりとしたバス旅も必要なのかもしれない。
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 その後、天神の定宿にチェックインし、大学の頃の友人と一献。これも福岡行の楽しみの一つであると思っている。

経由地 到着 出発
美東SA 1655 1805
小倉南BS 1800 1803
博多BT 1910 ----